私は今まで、あまり自分の人間性や思考回路について両親に話さずに生きてきました。私は一人っ子で、両親は割とドライなタイプで、かといって放任主義というわけでもなく、それなりに厳しく育てられたように思います。

昔から自分の性格や「パーソナルな部分」について話す事はなかった

仕事で遅くまで帰ってこない父より、専業主婦の母といる時間が長く、話すことも母の方が多かったのですが、どちらにもあまり自分の性格や思考回路などパーソナルな部分について話すことはありませんでした。

大学進学で一人暮らしを始めて、両親と物理的な距離が出来てからの方が関係が上手くいっているような気がして、就職した今母と長電話をすることも増えました。それでやっと母にだけは、自分がこういう人間でこういう考え方を持っているということだけ話すようになりました。そして先日、自分の性的指向についてカミングアウトしました。

私はパンセクシャルです。日本語でいうと“全性愛”というもので、文字通りどんな性別や性的指向を持った人も恋愛対象となり得るものです。それが自分の中で確立されたのは、大学在学中で、何がきっかけというわけではありませんでしたが、気づいたらそうであることが自覚できるようになっていました。

パンセクシャルであることをカミングアウトする必要はないけれど…

正直、異性と普通に恋愛をして結婚すれば、カミングアウトする必要もないし、言わずに生涯を過ごす必要もありませんが、何かを隠し立てしながら避けて話すことで、自分が本当に言いたいことや伝えたいことが充分に表現できないと思い、伝えることにしました。

母は特別驚くこともなく、ただいつも通り話を聞いてくれました。次の日にLINEで、「あらゆる性別の人が恋愛対象になるっていうことは、ある意味しあわせになれる可能性が大きいっていうことじゃない?」とメッセージをくれて、前向きに解釈してくれている様子でした。

私もまさにそういう風に自分の性的指向について考えていたので、軽蔑したりせずちゃんと理解してくれていることに喜びを感じました。

母は私の性的思考を前向きに受け入れてくれたけど、父には言えない

父は昔から、テレビに出ているいわゆるオカマタレントやそういった性質を持った人に対して、気持ち悪いと表現したりするタイプで、私はあまりそれを良く思っていませんでした。自分の性的指向が確立される前の話ですが、どこか違和感を感じていて、確立された後はきっとカミングアウトしたら同じように“気持ち悪い”と感じられてしまうのではないかと思って、言おうとは思えませんでした。

偶然Instagramの広告で、このエッセイの募集を見つけて、匿名で直接父に届くものではないものの、どこか自分の中でスッキリするのではないかと思い、書くことにしました。これから先、直接話せる日が来るかはわかりませんが、成人し独り立ちした今、親の望む子である以上に、“自分が好きだと思える”自分として生きていくことを認めてもらえる努力をしていきたいと思います。

もしこれが父の目にとまり、自分の子供だと気づいたら、どういう感情になるかは想像できませんが、自分の理想とは違うことに落胆するより、こうして胸を張って生きる私を誇りに思ってもらえたら嬉しいです。