尊敬する父へ

喧嘩の仲裁に入った私にあなたはこう言いましたね、「黙れよ、どっか行け、豚」。

「豚」。何回も、何百回も、何千回も、自動脳内再生されたその言葉は私の心を深く、背中に貫通する程に傷つけました。私はあまりの痛みに、顔を歪めながら部屋でひとり、泣きました。

「そんなんだから豚になるんだよ」父の言葉で、過食嘔吐になった

私は過食嘔吐です。きっかけは大学2年生の時、学業のストレスでいつもより少しふっくらした私に父が言った一言、「そんなんだから豚になるんだよ」。

それからは、ストレスでもう苦しくてたまらないほどに食べ過ぎては、沢山水を飲み、トイレに直行するようになりました。太った醜い自分では、愛されないと思ったからです。
どうやったらバレずに吐けるか、静かに吐けるか、どのタイミングでやれば良いか、そんなどうでも良いことが上手になりました。

初めは軽い気持ちでした。しかし、驚くべきことに、父が2年前に放ったその本当にたった一言が引き金となり、現在まで約2年間、今も苦しんでいます。

私は、帰る場所があること、美味しいご飯があり、教育を受けることができること、全てあなたのおかげだと思っています。今まで経済的に家族を守り、支えてきてくれた貴方に心から感謝しています。仕事ができて、様々な人から信頼され慕われる貴方を、とっても尊敬しています。
そんな素晴らしい貴方に知ってほしいことが2つあります。

言葉のもつ力を知っていますか?そしていつ、気付いてくれますか?

1つ目は、言葉のもつ力。
貴方は知っていますか、私が毎晩泣いていることを。
貴方は知っていますか、私がどれほどまでに体型管理に努めてきたか。
貴方は知っていますか、人間の尊厳に関わる暴言を世界で一番尊敬している人に言われる辛さを。
貴方はいつ、気がついてくれますか。

ある人はいいます。
「分かり合えない人間もいる、仕方ないよ。」「いつものことだから仕方ない、時間が解決するよ。」「そんなに意地張ってないで、適当に謝ればいいのに」「今喧嘩して疎遠になれば、将来後悔するよ。」「貴方は恵まれているのよ。」

そんなこと、とっくに考え尽くしています。しかしながら、過食嘔吐をするほどに自分の体型について悩み、苦しんできた私には「豚」は限度を超えていました。それが引き金となり、自らの自己肯定感が音を立てながら谷底に急降下、その後一ヶ月、私は精神の複雑骨折に苦しみました。

「私はパパの娘」は目には見えないパワーに。そんな貴方に認めてほしい

2つ目は、私の秘密の応援メッセージです。
貴方は知っていますか。私が追い込まれてもう無理だ!と思う時、ああもうしんどいと諦めそうな時、私には秘密の応援メッセージがあることを。
それは、「私はパパの娘!絶対大丈夫!なんてったってパパの娘!」。
それはもう、ファザコンを疑われるほどに恥ずかしくて絶対に周囲には言えないのですが、効果は毎度抜群です。

就活の時、大事なプレゼンの前、どんな時もこの言葉に救われました。貴方が必死に家族を守ってきたように、私も堂々と社会に出て勝負するんだと、勝ってやるんだと、この言葉からいつも目に見えないパワーを貰っていました。

お父さん。
もう、分かり合えなくたっていい。謝らなくてもいい。ただ、頑張ったねとそう抱きしめてくれるだけで、私は満足なのです。醜くても、太っていても、ただただ貴方を尊敬する私を、認めてはくれませんか。人間の私のままで。