かがみよかがみでは、今年の国際女性デー(3月8日)特別企画として、「私が○○を変えるなら」のテーマでエッセイを募集しました。
○○に入るものとして、①周囲 ②政治、社会制度 ③商品、サービス の3つのジャンルを設け、投稿を募りました。

集まったエッセイは、社会学者で東京大学名誉教授の上野千鶴子さん、史上最年少女性市長の徳島市の内藤佐和子さん、イー・ウーマン代表取締役社長の佐々木かをりさんにご講評いただき、全3回でそれぞれご紹介します。今回は「周囲」ジャンルの講評および大賞エッセイを発表します。

ご講評:社会学者で東京大学名誉教授の上野千鶴子さん

上野千鶴子さん総評

こういう投稿を読んでいると胸が痛くなります。「あるある」感満載、だけれど、今でもまだまだ「あるある」なのか、と。こんなに女性が傷つけられる野蛮な社会に、わたしよりうんと若い女性たちが生きているのか、と。読んでいて伝わるのは、傷つけられたことだけでなく、その時その場でイヤな思いを呑み込んで、言い返せなかった自分、に対するくやしさ。くやしさは怒りの一歩、怒りは変革の引き金。アンガーマネジメントなんか学ぶより、正しい怒り方を学びましょう、そしてイヤなことにはイヤと言いましょう。そうやって先輩の女たちも社会を変えてきたんですから。

◆私が「周囲」を変えるなら 大賞

セクハラを受けた日、「男でも女でもない私」になりたいと思った(める)

こういうときはどうしても極端な経験やえぐい事例に食指が動きそうになりますが、めるさんの経験は普遍性があって共感を呼ぶと感じました。「女であること」って面倒くさい、だから「男でも女でもない私」になろうとした「ショートヘアとパンツスタイル」の私。でもそれって「逃げだ」って自分で理解した。だから「男でも女でもないと言い続ける私を、社会ごと変えていきたい。ありのままに。」短いなかに成長物語が組み込まれていて、しかも強がりじゃないのがいい。強がりからオリた、っていうのがいい。

◆次点

・デリカシー皆無男は、産後の私に「ベイマックスみたい」と言った(柚はちみつ)

・「女はどこかで人生を諦めなきゃならないんだよ」夢を追う私に母は言った(篠原由紀)

このふたつは似ています。家族はいちばん残酷な関係。呪いのことばを刷り込まれます。でも家族だからって、何でも許されるわけじゃない。柚はちみつさんの「この世のすべてを改めることはできないから、まず我が家から変わっていこう」、篠原由紀さんの「さまざまな選択肢があって当たり前なのだと、社会と自分に示していきたい」は力強いことば。身近な人を変えられなくて、社会は変えられません。

・上司にパパ活を迫られた。家族のように接する優しい人だったはずなのに(MAGAO)

おえ、吐き気がする。対価型セクハラの典型。「パパ活料金比較」まで見せられるなんて。上司に対する信頼が無くなっただけでなく、あなたの自尊心も粉々に砕かれたでしょう。
「大笑いした男」と「同情した女」のどちらでもない第3のアドバイスを。メイルを証拠に労働相談窓口へ訴えてください。その上司の首がとぶはずです。(その相談窓口がちゃんと機能していれば、ですが。)

・結局外見か。球技大会で活躍した私より歓声を浴びる可愛いあの子(のなよ)

業績か外見か、って総合職か一般職か、の「女同士の対立」を煽るオッサンの分断支配のテク。業績主義の極致みたいなスポーツの場でさえそうなのか、というのなよさんのくやしさ、わかります。「歓声を浴びた」その子だって、あなどられているのは同じ。オッサンの罠にはまらないようにしましょう。

以上、「私が○○を変えるなら」ジャンル①「周囲」の講評&大賞発表でした!
たくさんの素敵なご投稿を、本当にありがとうございました。現在募集中のテーマはこちらから。
みなさまからのご投稿、お待ちしております!

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●上野千鶴子さん プロフィール

1948年、富山県生まれ。京大大学院社会学博士課程修了。東京大学名誉教授。日本の女性学・ジェンダー研究をリードし続けてきた。認定NPO法人「ウィメンズアクションネットワーク」理事長。著書は『情報生産者になる』『不惑のフェミニズム』など多数。