夕方、就活生を見かけると、つい目がいってしまうヒールパンプス
大学を無事卒業し社会人になって2年、がむしゃらに働きながら何気なく過ぎていく日々の中、リクルートスーツに身を包んだ大学生を見かけるたびに思い出すあの気持ち。特に会社終わり、夕方に就活生を見かけると、足元ばかりに目がいってしまう。
そう、私が気になるのは履いているヒールパンプスである。就職活動をしたことがある女子は大多数の人が履いたことがあるのではないだろうか。
あ、あの子もパンプス。その後ろの女の子のはちょっとヒール高めだなぁ、普段からブーツとか履いて慣れてるのかな。そんなことを社会人になってからフラットシューズを愛用している私はぼやっと考えてしまう。
かく言う私も、就活にせっせと勤しんでいたときはヒールパンプスを履いていた。私はそれが、いやでいやでしょうがなかった。大学3年生後半になり就活に関連する講義も増えてきて、まぁ行ってみるかと参加したときにもらったプリント。そこには、就活生の理想の服装が載っていた。
「みんなパンプスだよ」そう言われると、やめる勇気はでなかった
目がいったのは靴。やっぱり理想はヒールパンプスなのか。講義を担当している教授に聞いてみると、「みんなパンプスだよ。足が綺麗に見えて企業にも失礼がない」と答えが返ってきた。『みんなパンプスだよ』。そう言われると、やめる勇気は出なかった。
いざ就活が解禁になると、何社もの企業の説明会に参加する。1日に3、4社なんてこともざらだった。そうやって序盤から靴擦れと戦うはめになる。
わかりきっていたことだ、私は普段ヒールのある靴を履かないのに、急に1日中慣れないヒールパンプスで動き回るのだ、当然足が悲鳴をあげる。でも内定をもらうまではと、絆創膏を貼ってしのいでいた。
最初はかかとに絆創膏、そのかかとが痛くてまた違うところに負担がかかり、次は小指に絆創膏、次は親指に絆創膏。肌色のストッキングも履かなきゃいけないルールだから、絆創膏を貼ってからストッキングを履く。そのおかげで、出先で出血がひどく絆創膏をかえたい時はトイレでストッキングを全部脱いでから。
そんな日々が1ヶ月ほど過ぎた頃、限界がきた。もう無理だ、今日1日だけ、今日1日だけでいいからパンプスから解放されたい。そう思い、私は高校の頃に履いていたローファーを引っ張り出した。それを履いて行った1社目で、受付の採用担当の方に言われた。
「靴はどうしたの」
就活中は、ヒールパンプス以外靴と認められないのか。こんなに頑張っているのに、パンプスを履いていないくらいで責められるのか。泣きたくなった。
女性はヒールパンプスという固定概念。そのルールは必要ですか?
今思えばその方は、責めるつもりはまったくなく、ただ聞いただけだったのかもしれない。しかし、全員同じ格好をほぼ強要されているなかで、ああ聞かれると急に恥ずかしくなるのだ。自分だけパンプスじゃない、みんなパンプスを履いているのに。
間違えた、無理しても履いてくるべきだった。その日以降、就活が終わる時まで、私がパンプス以外の靴で就活をすることはなかった。
そんな苦い思い出があるため、就活生を見かけるとつい足元に目をやってしまうのだ。
もちろんパンプスの方が楽だという方もいらっしゃるだろう、そういう方はどんどん履けばいいと思う。パンプスは確かにかわいいし、足が綺麗に見えるのも事実だ。
私だって、ちょっとおしゃれしてでかけようと思う日はパンプスを選んだりする。
だが、ルールで無理矢理履かされるパンプスは違うのだ。私は就活をしている時、それを確実に選べる自由が欲しかった。
履かないという選択肢がないわけではなかった。しかし、パンプスを履かなくても、履いている人と差が出ないという確証もなかった。見えないルールに縛られていたのだ。
社会人になっても少し感じる、「女性はヒールパンプス」という固定概念。でも、無事に就活を終え、今私が履いているのはヒールパンプスではなく、フラットシューズ。
人によっては、ルールを破っていると思われるのかもしれない。そんな人には、声を大にして言いたい。
そのルールは必要ですか、と。