童謡を除く最も古い音楽の記憶は何だろうと、思いを巡らせてみた。
私の場合は多分、財津和夫さんの『サボテンの花』である。
90年代生まれの私の親が当時のトレンディドラマを見ていた影響だと思う。幼い私は歌詞の意味も分からぬまま歌っていた記憶がある。今思えば悲しいラブソングである。
自然に恋愛を経験し、シンガーソングライターになれると思っていた
私のように、最も古い音楽の記憶がラブソングであるという人は多いのではないだろうか。
それもそのはず、車の中、音楽番組、街中で流れるラジオなど、音楽が流れる場には必ずラブソングがあるからである。
世の中にはこんなにラブソングがありふれているし、10代のシンガーソングライターだってたくさんいて、彼らも悲恋から片思いまで色々な曲を書いている。
こういう曲が書けるということは、みんな恋愛を経験しているということだろう。また、当時読んでいた少女漫画雑誌を見ても、みんな中学生、高校生で恋愛をしているようだった。だから、自然に身を任せていれば当然に私も恋愛の色々を経験し、シンガーソングライターになれてしまうものだと思っていた。
小学校まではこんな風に考えていた。
高校卒業の時、「ラブソングで想像していたことって何?」と考えた
しかし中学、高校と進むにつれ、気付いてきた。自然に身を任せていては、普通は何も起こらないのである。人並みの見た目の私では一目惚れをすることもされることもないし、突然告白されることもないし、幼馴染とばったり再会して意気投合することもないのである。一般人の私では、たぶん自分から何かしらアクションを起こさなければ、本当に何もないのである。
ラブソングの中では一目で恋に落ちたり、連絡先を交換するのに恥ずかしくて思い悩んだり、会いたくて会いたくて震えたりっていうことがたくさんあるのに、全く経験していない。私が幼児のころからラブソングを聞いて想像していたことって何なのだろう、と考えながら高校を卒業した覚えがある。
周りを見るともちろん彼氏がいた子もいたけれど、どちらかといえば彼氏がいない子のほうが多かった気がする。学校柄もあると思うが、私の場合は中学校、高校ともにそうだった。
ではなぜ世の中にはこんなにもラブソングやラブストーリーがあふれているのだろう?誰が作っているのだろう?恋愛というのは一部の人にしか降ってこないものなのか?この疑問は今も解けないままである。
婚姻届を出す時に感極まるかと思いきや、淡々と終わってしまった
その後年を重ね、結婚した今の私がいる。結婚相手は社会人になってから知り合った人で、結婚後は子供にも恵まれて今はそれなりに幸せに生活している。
けれども、ラブソングのような恋愛をしたかと言うと、正直そんなことはなかった。
出会いもマッチングアプリだし、プロポーズもお互い結婚ありきで付き合い始めたのでまあ予定調和。結婚式も今の時代の流れもあり、ナシ婚。
「ラブソングのような恋愛は経験せず結婚することになったけれど、婚姻届出すときはsuperflyが流れて来て感極まるのかな」と思っていたけれど、あれもやはりドラマの世界の話で、普通に区役所に提出して淡々と終わってしまった。
今の生活は幸せだけれど、婚姻届を出した瞬間に「ああ、私はラブソングが書けないシンガーソングライターで終わってしまったな」と思った。