“可愛いはつくれる”という言葉が巷でよく言われていた時代があったが、今もそれは言えることである。
考え方は人それぞれだが、可愛さ、綺麗さは、つくろうと思えばつくることができる。自分の努力で可能なことがあれば、お金さえ有れば可能なこともある。
どちらかと言えばケチな私は、前者で努力する方法を選んできた。
あの夏、私はヘアアクセサリー作りに挑戦した。それは、“可愛い”をつくるためだ。

服はすぐ決まっても、ヘアアクセサリーが決まらなかった

小学校の時に授業で買った、夏っぽい水色の四角い箱には、夢や希望ではなく、針と糸が入っている。私が苦手な裁縫をする為の箱だ。
それを6年前の夏、躊躇しながら恐る恐る開けた。ヘアアクセサリーを作るためだ。
私は、ロリィタ。ロリィタファッションが好きだ。
その年の秋、人生初のロリィタブランドさんのお茶会に参戦することになった。お茶会に参加してみたかった為だ。約2ヶ月後のお茶会の為に、夏から準備しておくのだ。
当時大学生。社会人になったら忙しく参加できない可能性があると思い、その時出来ることをしたかった。また、ロリィタファッションが好きな友達が欲しかった。
しかし参加するとなり、悩みがあった。何を身につけて行くかだ。
服はすぐ決まったが、ヘアアクセサリーが決まらなかった。持っているヘアアクセサリーでは、その服はきまらなかった。
新しく買うことも考えたが、買わなかった。ロリィタのヘアアクセサリー、ヘッドドレスやボンネットなどは安くて3000円前後、10000円する物も普通にある。

手先が器用ではなく、裁縫は苦手。数日かけたヘッドドレスは…

大学生の私は、好きなロリィタファッションを着る以外でもお金がかかっていた。
出来るだけお金を使いたくなかった。そう言っている割にお茶会に参加するの?と思われるかもしれないが、お茶会は自分の経験の為である。それに伴う出費は別問題だ。
私はお金をできる限り使いたくないという、理由で悩みに悩み、裁縫箱を取り出してきたのだった。自分で身につけるヘッドドレスをつくろうと。
取り出してくる前には、生地屋さんでレースを買った。1m買っても400円もしなかった気がする。100均では、リボンでできた薔薇を買った。顎にかけるリボンは、昔プレゼントの箱についていてとっておいたリボンを用意。

初めてのヘッドドレス作り。
クーラーの効いた部屋で黙々と作った。
ミシンは家にない。というより、ミシンが怖くて私は使えない。ヘッドドレスは、手縫いで挑むことになった。
何かネットや本で作り方を見た訳ではない。頭の中で構築された設計図を元に作る。
しかし、裁縫が得意ではない私は、なかなか先に進まなかった。手先が器用な訳ではなく、並縫いすら曲がる。よく針のお尻を指に刺す。裁縫は、嫌いではないが苦手だった。
数日かけてできたヘッドドレスは、想像以上に可愛かった。裏面を見ると縫製が雑で現実を見る羽目になるが、自分で使うので問題はない。

売り物にしようとは1度も思わず。でも自分の為なら作ろうと思えた

よくロリィタ用のアクセサリーを作って販売している方がいる。その方々とは比べ物にならないクオリティだが、それが自分の精一杯の努力だった。
“可愛いをつくる”為に自分でヘッドドレスを作り切った。そして、秋のお茶会の時、頭にして行った。自分の精一杯の努力で“可愛い”をつくった。

今思えば、6年前の夏、よく思い切ってヘッドドレスを作ろうと思ったなと未だに振り返る。   
その後私は何度かヘアアクセサリーを作った。ヘアクリップや、カチューシャ、ロリィタファッションに合わせる為だ。全て自分用。
いくつか作っても縫製は雑なまま。売り物にしようとは思ったことは1度もなかった。しかし、自分の為なら作ろうと思えた。
現在私は他にやりたいことがある為、ヘアアクセサリーを作っていないが、また気が向いた時作りたい。“可愛いをつくる”材料は家にあるのだから。