高校生の頃、私は一生忘れられないであろう恋愛をした。

彼とは高校1年の頃、同じ教室で授業を受けていた。きっかけは彼からのアプローチで、面食いだった私は2週間で付き合った。男性と恋愛関係になることが少なかったために、アプローチをされることに女としての喜びを感じていたのかもしれない。

かっこよくて、「王子様」と呼ばれるような彼と付き合うことになった

彼は学年一かっこいいと噂されており、「王子様」と呼ばれるような人だった。実際、優しい人であったし、モテていた。

そんな彼と私は釣り合うわけもなく、一部の人は彼のことを「ブス専」とも呼んでいた。そう言われることは苦しかったが、一番嫌だと思っていたことは、彼に私と付き合ったことを後悔させることであった。

かっこいい彼と、特別可愛いわけでもない私。彼に捨てられるのが怖かったのかもしれない。しかし、彼が私に何度も伝えてくれる「可愛い」という言葉を信じた。彼は私の理想の人だった。さりげない心遣いができて、辛い時期も親身に支えてくれた。

しかし、ある日事件は起こった。彼は、私と同じ部活の友人に心移りしたのだ。きっかけは、友人からのアプローチだった。彼女のことを信じ切っていて、彼女から私と彼の思い出の写真を見せてと言われれば、素直に見せていた仲だった。

この日を境に、私は人間不信になった。周りの友人も「相談にのるよ」とは言ってくれても、どこか他人事のようで、気を遣ってくれているはずの言葉が空虚なものに感じた。支えてくれる人はいなかった。

「新しい恋をしたい」という気持ちはあるが、まだ踏み込めずにいる

今、私は大学生だ。もちろん、彼も彼女も私も別の大学に通っている。ちなみに彼と彼女は1ヶ月も経たないうちに別れたという。

風の噂で聞くが、彼は「王子様」と呼ばれていた頃とは一転し、異性関係が良いとは言えない状況になっているのだという。私と別れてから大きく変わってしまったと言う人もいるが、それが本来の彼であったのかもしれない。そのことに気がつくことが出来なかった私は、本当は彼のことを好きでいたようで、女性としての自信が持てない自分を好きになってくれた“王子様”の彼が好きだっただけなのかもしれないと今は思う。

恋は人に幻想を抱かせる。いつの日か言われていた「ブス専」という言葉は、別れてからよりいっそう私を傷をつけた。彼がいたからこそ何の効力もない言葉だったのに。その言葉は今もなお私の脳裏に蘇り、じわじわと私を縛り、苦しめている。

大学生になったんだから、新しい恋をしたいという気持ちはある。過去の傷を上書きしたいし、このままだとずっと傷ついたままの、いつまでも自分を認めることが出来ない惨めな自分でいるかもしれないと思うからだ。

「恋をしたい気持ち」と「傷つきたくない気持ち」が行ったり来たり

だが、どうしても踏み込めない。友人にしても、無意識に「この人は私を傷つける人かどうか」を選別し、交友関係も以前とは狭いものになった。

恋愛だと、男性が怖くなった。全員が彼のようなことをする人ではないと分かっていながらも、男性同士がするちょっとした異性に対する会話が嫌になったり、女の子の顔の話をしている人たちを見ると、いつも逃げたくなった。

気になった人がいても、傷つきたくないが故に一線を引いてしまう。恋をしたいという気持ちがあっても、傷は癒えていない。それが現状だ。

そんな私がこれから先恋愛できるかどうか、私にはまったく分からない。今の私には、近い将来隣にいる誰かと笑っている未来が見えない。

だが、“運命”というものがあるのならば、いつか今の私が懐かしく思えるような恋愛が待っているのだろうか。そんな恋に出逢った時は、今の私をぎゅっと優しく抱きしめてあげたいと思う。