ある日、2人の友人と夕食後まだ飲み足りなくて、バーに向かった。まず席に案内され、席の場所がわかるようハンカチを置き、ドリンクを注文しに向かった。

すると、「お姉さん、ハンカチ置いたままですよ」と、20代後半の清潔そうな男性に声をかけられた。私は「あ、それ席が分かるように置いておいたんです、わざわざありがとうございます」と言うと、「そういうことか!おせっかいなことしてしまったね。ははは」と彼は言った。そのときは、彼との出会いが大きなことになるなんて思ってもいなかった。

彼らとは席が近く、会話が弾みみんなで少し飲み、連絡先を交換した

彼らとは席が近く、会話が弾みみんなで少し飲むことに。終電も近くなり帰り際、彼に「またみんなで飲めたら嬉しいから、連絡先教えて」と言われた。その場の雰囲気を壊すのが嫌でうまく断れず、まあもう会うことないけど、とりあえず交換しておくかと思い「わかりました、またみなさんで飲みましょう。今日はごちそうさまでした!」とお礼を言い、店を出た。

次の日、彼から連絡が入っていた。「昨日はありがとう、また飲みに行こう!」と。私は「こちらこそご馳走になり、本当にありがとうございました。また2人も誘っておきます!」これで終わりと思い、連絡を終えようとしたら、「2人でご飯行けないかな?」と。

正直私から見た彼は、清潔でさわやかでバリバリの営業マン。仕事もプライベートも活き活き楽しんでいるように見えた。この前は、あまりお話を詳しく聞けなかったから、いろいろ話せたら良いなと思い、後日2人でご飯に行くことに。

いろんな話をしてくれて、話を聞いてくれて、楽しくてあっという間に時間が過ぎた。そこから何度か会うようになり、私はその人のことが気になり始めた。何度か会い、付き合ってもいないのに体の関係を持ってしまった。

「彼女いるのかな……。でも、こうやって会えてるってことはいないってことかな、今の関係って何だろう」「でも、仕事も順調で性格もよくて、彼女いないわけないよな……」なんて考えた。

仕事終わりに突然、彼から電話が着て、私はそわそわした気持ちに…

突然、仕事終わりに電話が電話が着た。「お疲れ様、これから会える?話したいことがあるんだ。駅まで迎えに行く」と。私は「わかりました、駅に向かいますね」と答えた。

そわそわした気持ちで駅に向かい、車の助手席に。すると彼は「俺、ずっと言えてなかったんだけど、結婚しているんだ」と言った。私は「え、うそでしょ……。私、気になって好きかなって思っちゃって期待してばかみたい。ははは」と状況が理解できず、どうしていいか分からず笑ってごまかした。

彼は「隠していてごめん。結婚してまだ1年くらい。奥さんとのすれ違いが多く、うまくいっていないときに出会ってしまった。俺も好きになってしまった」と言ったが、私は「何いってるの。もう会えないし、会ってはだめだよ」と返した。彼は「いや、でも……会えるならまた会いたい」の繰り返し。

私は仕事の研修で遠方に行ったとき、「俺も出張で近くにいるから会えないか」と言われることも。その一瞬で、“私の好きな人”から、“私が不倫相手”に。そこから彼のことで頭がいっぱいで、会ってはいけないのに、また会いたくなってしまう。自分のことなんて向いてくれないことが分かっているのに、どこか期待をしてしまう。

ぐっと堪えながら過ごす日々が何よりしんどかった。どこかで区切りをつけないといけないと思っているけど、本当は会いたい。ダメという気持ちと、一緒にいたいという気持ち、双方に押しつぶされそうになる。ちゃんと早めに終わらせないと、2人だけの問題ではなくなる。

言いたいことたくさんあったのに、私は思ってもいないことを口にした

彼とは職場が近かったから、そういう時に限って居酒屋でばったり会ってしまうことも。会うたびに連絡が来たり、「元気?」と声をかけられたり。

もう顔見ると切なくなるから、最後にちゃんとさよならをしようと思っていたのに、思ってもないことを口にしてしまう……。「私、好きな人出来たから。もう放っておいて!」と。彼は「あ、そっか……そうだよね、ごめんね。幸せになってね」と言った。

好きな人なんて他にいないのに。本当は「ありがとう」と、ちゃんと伝えたかったのに。「逃げずにちゃんと奥さんと向き合ってほしい」って言いたかったのに。言いたいことたくさんあったのに、空回りして思ってもいないことを口にしてしまった。

もうそこからばったり連絡も会うこともなくなった。一瞬で終わってしまう恋だった。それから数年経ち、たまに思い出す。おせっかいかもしれないけど、ちゃんと幸せになれていますか?