出不精な私は、好きなアーティストのライブの日だけ活動的になれる

出不精でめんどくさがりやの私の休日は、大体ご飯を食べて、携帯を触って、昼寝をすると終わる。仕事中は数えきれないほどやりたいことが思い浮かぶのに、いざ休みになると仕事で疲れた体を癒すことで必死だ。

だけどそんな私が唯一、朝から活動的になる休日がある。
好きなアーティストのライブの日だ。
ライブの日はいつものぐーたらな自分からは想像できないほどアクティブに、慌ただしく一日が終わる。

いつもは一秒でも長く布団の中に留まることに必死で、ほとんどスッピンで仕事に向かうような私も、朝日が登る前から化粧をし身嗜みを整え、始発電車に乗ってライブ会場に向かう。

物販に並ぶ為だ。
イベントによるが、始発で並んでも欲しいものが買えない時もあれば、開演直前でも普通に目当てのものが売っていることもある。最近は事後通販でライブ後に売り切れたグッズを再販してくれるコンテンツも少なくはない。

それでも私は、あのまぶたを擦りながら乗る電車や、暑さや寒さに耐えながら並ぶ列も嫌いではなかった。
同じものを好きな人たちだけが集まるあの空間。暗かった周りが少しずつ明るくなり、時間が経つに連れて少しずつ人が増え賑やかになってくる。

人見知りな私も、この日ばかりは多くの人とコミュニケーションをとる

数多くのイベントに参加して来たのであろうオタクたちは、いかに待ち時間を快適に過ごせるかを研究し、様々な工夫を凝らしている。

至るところでブルーシートや折り畳みの椅子が活躍し、たまに前の方から「最後の方は申し訳ありませんがゴミの処分だけお願いします。」なんて書かれたお菓子の袋が回って来て、一人一つずついただいたりもする。

なんて優しいオタクの世界なんだろうか、と胸が熱くなる。
私はリアルの友人で同じ趣味の人がいないので、ライブ参戦は大抵一人か、S N Sで知り合った人とする。S N S上で約束をして一緒にチケットを取ることもあれば、目当てのチケットが手に入らず、譲ってもらいそのまま一緒に参加することもある。

物販からライブまでトータルで一緒にいることもあれば、物販やライブのみ一緒のこともある。
普段は人見知りが激しく、店員さんに話しかける事すらできない私も、この時ばかりは多くの人とコミュニケーションを取る。

当たり前の休日を大切にして、いつかあの最高の休日を過ごせる日まで

S N Sで繋がっている人たちと連絡を取り合い、物販後から開演までの間は挨拶まわりで忙しくなる。各々がお菓子や手作りのプレゼントなどを用意し、交換し合うあの時間を友人や家族に伝えると、大抵理解してもらうことはできないけれど私はすごく好きだし、いつも一期一会に感謝する。

挨拶まわりを終え、会場に入り、開演までの変な緊張感に包まれながら、その時をただ待ち、いざ始まってしまえば時間なんて一瞬で過ぎ去り、閉演後は泣きながらS N Sに感想を呟く。家に帰り布団に入ってもライブの興奮は収まらず、その日1日を思い出しながら程よい疲労に包まれ眠りにつき、また当たり前の平日が始まる。

同じものを好きな人たちだけが集まり、共に同じものを応援し楽しんでいるあの空間はライブ本番のみではなく、ライブ前からライブ後まで、とにかく全てが特別で、いつもとは違う最高な休日になる。

私の好きなアーティストが、「当たり前は特別を特別だと感じるために必要な時間だ」と歌っていた。時代が変わり、あらゆる娯楽が規制され、特別な休日を過ごすことができなくなって早一年。私はいつも通りの休日をただただ過ごしている。

あの頃に戻りたいと何度も思うけれど、今はあの特別な時間をより特別だと感じるための準備期間なのだと思うことにして、いつかあのいつもと違う最高の休日を過ごせる日まで、当たり前の休日を大切に過ごしていきたいと思う。