特集:わたしと生理

「産まないくせに生理が来るの意味ない」と言われ、私の生理を考える

わたしと生理

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私の生理との格闘は、10歳の時、洗面所の暗がりから始まった。まるで闇組織の密談のように、小声かつ早口で、母からナプキンの処理や隠し方などを教わったのを覚えている。

私はその頃、水泳を習っており、選手コースに所属していたのだが、初めての生理の時私が1週間レッスンを休むと、男性コーチから嫌な顔をされた。「水圧で水中では出血しない、入れ」「生理になったらレースを棄権するつもりか?」と。

上級生に教わり、タンポンを使って入ることになった。まだナプキンの使い方にすら慣れていないのに。自分の体の構造もよく分からないまま、1人夜中のお風呂場で、手を血まみれにしながら練習した。幸い使い方にはすぐに慣れたが、あの夜のことは未だに忘れられない。

女性の体は複雑なのに、私はあまりにも自分の体に対して無知だった

20歳を過ぎて、低用量ピルと月経カップの存在を知ってからは、生理生活の快適さが大幅にアップした。PMSも出血量も回数も減らすことができ、生理が来る日まで事前に分かるようになったのだ。ネットのある時代でよかったとつくづく思う。学校や周囲の人は、誰も教えてはくれないのだから。

卵巣は、左右交互に排卵するわけではないこと。卵管は、骨盤内を水中のゴムホースのように漂っていること。卵管内部は、約1mm程しかなく、簡単に癒着して詰まってしまうこと。卵巣内で男性ホルモンが作られていること。毎月、生理のたびに約1000個もの卵子が消えていくこと。卵子の寿命は、排卵してから6~24時間くらいしかないこと。生理の出血があっても排卵しているとは限らないこと……あげればきりがない。

正常に排卵し生理がくるというのが、こんなにも奇跡的なことだったとは。面倒くさく不愉快な存在だった生理に、感動する日がくるなんて思わなかった。

子宮と卵巣だけで生理が成り立っているわけではなく、脳下垂体、甲状腺、何種類もの女性ホルモン、男性ホルモン、インスリン、血糖値、体内のありとあらゆるバランスが絶妙に保たれて初めて、生理がくる。

注射や内服薬のほんの少しのホルモン量の違いで、体の反応ががらりと変わる。女性の体がこんなにも複雑に、目まぐるしく変化し続けているなんて。

私はあまりにも自分の体に対して無知だった。女なら誰でも子供くらい産めると思っていた。生理があるのは当たり前、若けりゃ産めて当たり前。でも、全然違った。

来なくていいのに、不妊治療中は注射を打って「生理」を起こしている

今の私は排卵障害があり、ホルモン注射を打たなければ生理が来ない体になっている。生理をおこすために、お尻の両側に2本の筋肉注射を打つ。注射した後も10時間程ビリビリとお尻に痺れるような痛みが残り、歩くのもしんどい。

なんで女ばかり、こんな目にあわなければならないんだろう。女なんかに生まれなきゃよかった。いつもいつも痛いこと、辛いことばかり、理不尽だ、不公平だ、夫の方が深刻な不妊の原因があるのに。そうぼやいても、体の仕組みは変えられないので、どうにもならない。

注射を打たなければ年に2、3回しか生理が来ない。生理なんか来なくていいのだが、不妊治療中はそういうわけにはいかない。

生理が来なければ子宮内膜は剥がれず、卵巣も次の卵子を育てることができない。妊娠が成立しなかった場合、来月の新たなチャレンジに向けて、生理は必ず来てもらわなければならないのだ。

まるで厄介なクレーマーだけれど、売上のほとんどを占めている取引先のようだ。関わりたくないけど、来てもらわなきゃ商売が成り立たない、そんな困った客だ。

「産まないくせに生理は来るんだね。それ意味ない」とある人が言った

結婚後、子供を催促されるのが嫌で、「子供は産まなくてもいいかな」と強がっていた。

そんな私が生理のしんどさをぼやいていた時、ある人が冷めた目でこう言った。「産まないくせに、一丁前に生理は来るんだね。それって意味ないよね、可哀想」と。

子供は産めそうにないけど、今も、寝ている間も、私の体は必死にバランスをとろうと闘っている。命の源を作ろうと踏ん張っている。生理の存在意義なんて、それだけでも十分じゃないだろうか。

出産という結果を得られなくても、この私の体内での静かなる闘いは、決して無駄だと思いたくない。こんなに大変で繊細で大胆な命のサイクルを「産まなきゃ無駄だ」なんて、言われたくない。

ただ生理が来るというだけでも、私達はとてつもなく複雑で凄いことをしているのだ。産めない、産まないからって、私の体は私の存在は無駄なんかじゃない。

生理は、知れば知るほど神秘的なサイクルだけれど、変に神聖化し、痛みや苦しみを美談や修行として引き受けることはしたくない。現実的に、冷静に、生理に伴う痛みや不快感は全力で回避し、自分の体を今まで以上に大切にしていきたい。私と生理の格闘は、これからもずっと続いていきそうだ。

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