左、左、左、左、、、、、右。たった1秒たらずで“アリ”か“ナシ”かを見極めるマッチングアプリで、私は好きな顔を見つけた。

マッチングアプリで知り合ったタイプの彼。すぐに会うことになった

今まで、アプリの人とは何人も会ってきた。もう、何人だかわからない程に。

高校の時に初めてできた恋人は6年付き合ったのに、電話一本で振られた。それから私は、恋愛がわからなくなった。私は彼が大好きだったし、彼も私が大好きだと信じてた。上手くいっていると思ってさえいた関係が呆気なく壊れる瞬間が、怖くてたまらなくなってしまった。

心はいらない。いつかなくなってしまうから、いらない。今はただ側で、確かな人の体温を感じるだけで安心できる。そんな中、彼と出会った。今までの人生で、一番好きな顔だった。

メッセージを送ると、あっさり会う約束ができた。彼も私がタイプだと言ってくれた。駅で待ち合わせて、一軒目はおでんと焼き鳥の店に行った。仕事の話とか、過去の恋愛とか、何に興味があって、何が嫌いなのか。色んな話をした。

二軒目に移って、一人グラス3杯ずつくらい日本酒飲んだ。「あー、今日は一緒にいたいなあ。でもなあ」って彼が言うから、「一緒いたらだめなの?」なんて聞いちゃって。「んー、うち来てくれる?」と言われた。

その日は「チューだけは許して」と言われ、本当にキスだけの夜だった。くっつくわけでもなく、同じベットで爆睡して、朝方に目が覚めると彼と目が合った。布団めくって「おいで」って。それから昼まで抱きしめ合って寝た。私は6年付き合ったあの元彼の夢を見た。

その後、彼が大好きな近所のラーメン屋で具沢山の味噌ラーメンを食べて、公園でコンビニのコーヒーを飲んで電車が来るのを待った。「また明日ね」って、バイバイした。

次の日も私たちはデートをした。彼は、昨日よりかっこよく見えた

次の日は美術館に行った。あの薄暗い照明も相まってか、彼が更にかっこよく見えて、私は絵より彼を見つめた。ダボっとした黒系統一の服も好きだったし、昨日よりまとまってる長い髪も可愛いかった。

作品を一つ一つ丁寧に見るところとか、ちょこちょこ面白い感想言ってきたり、私の薄っぺらい感想に笑ってくれたり、「何がよかったか後で教えてね」って可愛いことを言ってきたり。凝り固まった心が少し、動く気配がした。

その後カフェに行って、ラフランスのタルトを分けっこして食べた。カフェオレの入ったマグを見て、「陶芸したいね、今度一緒に作りに行こう」なんて言って。

その後は、また飲みに行った。お酒が入ると、彼は大胆なことを言った。「こうやって彼女とお酒飲むのが夢やった」「今日もうちに来てくれる?」と。断る理由はなかった。彼に惹かれていた。

帰りは手を繋いで、その手をポッケに入れてくれて。コンビニに寄って、ビールとピノとピスタチオのパピコを買って帰った。家に着いてしばらくするとトランプしよってなって、負けたら勝った方の言うこときこうねって、そんな少し気恥ずかしいゲームをした。

私が負けると彼は「ハグして」って両手広げて待ってて、ぎゅってして、チューして見つめ合って、「俺と付き合ってくれる?」と言った。

私が「大事にしてくれる?」と聞くと、「大事にするよ」と答え、「私でいいの?」「いいよ。逆に俺でいいの?」と、録音しておきたいくらいの甘い会話だった。

体の関係になると思っていたから、まさか付き合おうと言われるとは…

体の関係になるだろうかと予感してたから、まさか付き合おうと言われると思ってなかったけど、ちゃんと言葉にしてくれる彼が、愛おしかった。

私が「今日言ってくれるつもりじゃなかったよね?」と聞くと、彼は「うん」と答え、さらに私が「雰囲気に呑まれたんじゃない?」と聞いた。すると、「いずれ言おうと思ってたから、それがちょっと早まっただけやで」と言ってくれた。これ、嬉しかったな。この人ならもしかして、と思った瞬間だった。

「明日起きてやっぱなしとかやめてね?」って2人で笑い合って、それもなんだか、よかったよね。お風呂から上がると、髪の毛をドライヤーで乾かしてくれた。寝る時もずっとぎゅってしてくれた。可愛くて可愛くてたまらない愛犬を撫でるように、何度も背中を撫でてくれた。2人で観たかった映画を観て、今度あれしよう、あそこに行こう、そんな話を何度もした。

そんな彼とも、3ヶ月で別れがきた。「何が好きやったかわからなくなった。引っ越しを考えても、転職を考えてもそこに君はいない」と言われた。「うん、わかったよ。元気でね」その一言で、終わった。

まだ、私の恋は始まらないまま。