今でも思い出す、高校1年生の時の初めての恋人。
幼い頃から少女漫画で夢見ていた初めての彼氏は、思い描いていたようなキラキラした青春の記憶としては片付けられず、29歳になった今でも、私の胸にトラウマとして染み付いている。

席が近く、仲良くなった彼。いつしか2人で帰るようになって…

田舎町で育った私は、幼稚園・小学校・中学校と同じクラスメイト達と成長した。
可愛いと評判だった姉と比べられ、「妹は可愛くない」といじられることも多々あり、早くこの世界から抜け出したいと思っていた。

当時流行っていた少女漫画に「高校デビュー」をするというものがあり、私も主人公のようになりたいと、クラスメイト達が行かない高校へ進学をするために、中学3年生の時は死に物狂いで毎日勉強をした。
努力の甲斐もあり、無事に県立高校へ進学をした私だったが、現実は漫画の世界のように甘くはなかった。

瓶底メガネをコンタクトレンズに変え、短かくおかっぱだった髪を伸ばし始めたものの、イメージしていた主人公のように女の子らしくすることはできず、高校でもみんなの前で変顔をしたりと、友達は出来ても恋人ができるようなキャラクターにはなれなかった。
そんな中、席が近いことをきっかけに仲良くなったグループの中の男の子から頻繁にメールが届くようになった。

もしかして私のことが好きなんじゃないか?
そんな風に思い始めた頃には、彼と付き合ったらどんな感じだろう、私のどこを好きになってくれたんだろうと、彼に夢中になっている自分がいた。
友達にも彼とメールしていることや気になっていることを伝えると、周りが協力してくれ、高校1年生の11月ごろには、自然と2人で帰るようになっていた。

口数の少ない彼だったが、彼なりに一生懸命、好きだと言ってくれた時には嬉しくて涙が溢れた。
私たちはクラス公認のカップルとなり、周りからいじられることすら嬉しくて、私のことを好きだと、可愛いと言ってくれる人がいたことが本当に嬉しかったのを今でも覚えている。
しかし、そんな幸せな時間も長くは続かなかった。

どれだけ努力をしても、彼の気持ちは次第に離れていった

高校2年生になり、クラス替えでバラバラになってしまった私達。
彼と少しでも一緒にいたくて毎日連絡を取り合い、一緒に帰っていたが、少しずつ、彼の気持ちが離れていくのを感じた。

彼にもっと好きになってもらえるようにとダイエットをし、メイクも友達に教えてもらった。周りから可愛くなったと言われることが増え、少しずつ自分自身に自信を持てるようになってきたのとは反対に、彼からの連絡はどんどん返信が少なくなっていった。
彼と一緒に帰っていても、彼は私の話に相槌しかせず、上の空。無言の時間がとても辛かったけれど、一緒にいられる時間を失いたくなくて、必死に笑顔で話し続けていた。

少しでも彼の興味のある話ができるよう、1年生の時に彼と仲の良かった女友達のA子に相談をするようになった。友達からは「そんな男別れちゃいなよ!」と言われることが多かった中、A子だけは「彼は口下手なだけだよ」と前向きな言葉を言ってくれるのも嬉しかった。

私はクラスの中心グループの中でワイワイと騒いでいるタイプで、クラスの端の方で数人と固まっていたA子とはあまり話したことがなかったけれど、彼のことをきっかけにA子と仲良くなることができた。
A子は自分のことを「ボク」と言ったり、少し変わった子ではあったが、色々とアドバイスをしてくれるので、頼りにしてA子にはなんでも相談をするようになった。

A子のアドバイスをもとに彼の好きな漫画や音楽などを聞いてみたものの、いつになっても彼の態度は改善せず、高校3年生の春、彼に気持ちを問い詰めた。
彼からは一言「友達に戻りたい」と言われ、予想していた私は彼の前では泣く事なく笑顔で了承した。

その夜、A子には泣きながら電話し、A子は何時間も私の話に付き合ってくれた。
私の初めての恋人は高校3年間付き合っていたものの、恋人らしいことは最初の数ヶ月間しか出来なかった。それでも楽しい思い出になったと、この時は思っていた。

初恋の人にふられた翌日、彼が一緒に歩いていたのは…

翌日、私は彼とA子が一緒に登校している姿を目撃する。
そしてA子から「彼から言い寄られたので付き合うことにした」と報告を受けた。

数ヶ月後、ショックを引きずっていた私を見かねて、A子と共通の友人からA子が私と付き合う前から彼のことが好きだったことを知る。また、私がA子に相談していた内容を、A子は彼に「こんな風に悪口を言っていた」と話を盛って伝えていたということを知った。
A子を問い詰める気力もなく、そんな話を彼が信じてそのままA子に乗り換えたという事実がただただ悲しかった。また、A子や彼の態度からその事実に気づけなかった自分が惨めで、悔しかった。

私は今でもこの記憶のせいで、共通の友達がいる男性のことは好きになれず、人を疑う癖がついた。
辛い経験ではあったが、おかげで見る目が養われ、理想の結婚をすることができた。今でも会いたいとは微塵も思えないが、A子に感謝したい。

貴女のおかげで私は今幸せです。ありがとう。