2月11日、私は一足先に出発していた彼と福岡の博多駅で待ち合わせをした。
日々の仕事や鬱憤を忘れるための東京からの小さな逃避行。
博多で一日過ごした後は、大分に移動して、温泉でほぐれるまで癒される予定だった。
でもとりあえずは博多で、数年前に転勤になった共通の男友達に会おう。
それが今日の予定だった。
友人と別れた後、彼と私は、海の見える宿で最高の時間を過ごした
私は、駅についたことをメッセージで送り、周りを見渡した。
少ししたら、彼が共通の友人と共に歩いてきた。
二人は背が高く、顔も整っているので目立っていた。
更に言うと、二人が手に持っている缶ビールが余計に目立たせていた。
彼は私に気づくと大きな笑みで笑いかけた。お酒を持っていない方でブンブンと長い手を振っては、友人に私がいることを告げているようだった。
友人も私に気づくと、嬉しそうに手を振った。
私は、二人の方に歩いて行き、友人に、そして彼に抱きついた。
「久しぶり!元気?」などと立ち話をしてから、夕飯を食べる飲食店に向かう。
そして三人でもつ鍋を食べ、彼と私が泊まる予定だったホテルに友人を忍び込ませ、朝まで語り明かした。
次の日、友人と別れた私たちは、博多駅から大分の別府駅へ向かった。
途中でプラットフォームの上にある立ち食いラーメン屋さんで博多ラーメンを食べて、新幹線並みに豪華な急行列車にはしゃぎながら移動した。
別府駅に着き、とりあえず私たちは宿に向かった。
宿について、海の見える部屋に感動してから一休みと題してゴロゴロした。
一息ついたら温泉の大浴場に向かい、誰もいない風呂場でまったりした。
初日の夜ご飯は、ホテルで地元の旬の名産品をいただいた。
何から何まで最高で、二人は終始笑顔だった。
夜は二人でテレビを見ながら夜更かしして、眠くなったらフカフカの布団で寝た。
貸切露天風呂では、躊躇もなくじゃんけんをして順番に入った
翌日、私たちは大分の観光名所、地獄巡りをしてたくさん写真を撮った。
家族連れやカップルが多いねなんて言いながら、スタンプラリーを終わらせた。
地獄巡りが終わって宿に戻ると、彼はちょっと仕事を片付けないといけないから、遊んできていいよと言った。私は遠慮なく近くの銭湯へと足を伸ばした。
夜、仕事の終わった彼と街に繰り出してご飯を食べた。二人ともお酒を飲むので、地元で人気の居酒屋に入り、美味しいご飯とお酒をいただき、とても楽しい時間を過ごした。
次の日の朝、旅の最終日、私たちは宿の特典で付いてきた貸切風呂に入った。
なんの躊躇もなく、じゃんけんをして、先に入る方を決め、順番に入った。
私はSNSのために必死に一人でカメラをセットしてタイマーで写真を撮った。
後日SNSに載せた写真には、「え?!彼が撮ったの?!」という問い合わせがたくさん届いた。
彼と私はただの幼馴染。ある意味恋愛感情より相手を大切にしている
あれ?と思う人もいるだろう。
もしかしたらテーマを読めば一目瞭然なのかもしれない。
そう、私と彼はカップルでもいい感じの雰囲気の二人でもなんでもない。
ただの幼馴染だ。
いくら幼馴染といえど、同じ宿に二人きりで泊まるなんて!と思う方もいるかもしれない。
言い訳をすると、私と彼が出会ったのは、21年前、私たちが5歳の時だ。
幼稚園の時に出会い、それから小・中・高とずっと同じ学校・同じクラスなのだ。大学に入っても休みのたびに遊んでいるような仲で、26になるまでずっと仲良くさせてもらっている。
私は自分の兄弟より長い時間を彼と過ごしている自信があるし、何がどうなっても彼と一線を越えることはないと思っている。
恋が始まらない理由を聞かれると、幼馴染だからという理由にたどり着くが、もっと深く掘り下げると、私は彼のことを友達として信頼しているのだろう。
アメリカには、Friend-zoneという仲が良すぎて異性を異性として見られない関係性を表す言葉がある。私と彼は確実にお互いが異性だと理解しているが、このFriend-zoneに限りになく近いと思う。
男と女の関係以上に、お互いのことを一人の人間として見ているのだ。
私が彼のことを恋愛対象として見ることは、むしろ失礼に当たると思っているし、彼から恋愛感情を向けられたら私はきっと怒るだろう。
ある意味、恋愛感情より相手を大切にしているのかもしれない。
彼氏はその時だけのものだが、友情は一生だ。
彼とは、今後も一生一緒にいて欲しいから、私たちの間には恋が始まらないのかもしれない。
なんだかプロポーズのようになってしまったが、これが私と彼の真実なのだろう。