あれはたしか小学校4年生だったと思う。
その日は突然やってきた。

いつも通り小学校から帰り、友達と話していた放課後。違和感を覚えた

私は小学校から帰ってきたらまず玄関先にランドセルを放り投げて、親に買ってもらったピンクの自転車で近所のスーパーの二階の休憩スペースのようなところに行っていた。同級生の女の子たちと集まって、そこに設置されていたプリクラを撮ったり、お菓子を食べたりなどして遊ぶことが私の日常であった。

小学生の私の主要な移動手段は自転車だった。ピンク。嫌いだった。カゴ、サドルまで徹底的に薄いピンクだった。
買ってもらったときは小学校2年生。真っ先にピンクを選んだ。双子の姉が白を選んでいたのを横目に「私の自転車の方が可愛いもん」くらいの気持ちだった。

成長するにつれてこの自転車がとても幼稚に思うようになり、恥ずかしかった。でも文句は言えない。遊びに行くのに徒歩だととてつもなく時間がかかるし、周りの友達も基本自転車で移動していたので、自分ひとり徒歩だと気を遣わせると思っていた。

話は戻るが、休憩スペースで門限の時間までだらだらと過ごしていた。隣のクラスの○○君は△△ちゃんのことが好きらしいよなど、小学生女子が好物とする類の話に盛り上がっていたところ、何やら下半身に今まで感じたことのない違和感を覚えた。

もしかして漏らした?自転車を降りるとサドルには血がついていた

「私もしかして漏らした?」と思ったものの、休憩スペースのお手洗いはお世辞にもきれいとは言い難いものだったので、確認しに行くのを我慢した。ほかの友達は座って談笑していたが、私は座るとまずいのではないかと直感で分かったので、不自然に思われない程度に立った状態でおしゃべりに参加していた。
そうこうしているうちに門限の時間となり帰ることになった。私はピンクの自転車のサドルに跨り、帰路に就いた。

家に帰り着くころには、今夜の夕飯のことや明日までにしなくてはいけない宿題のことのなどで少しの間、下半身の違和感を忘れていた。
が、しかし自転車から降りると、ピンクのサドルには血がついていた。ショックだった。
「大人の世界」に放り投げられた感覚で怖かった。これから毎月血が出るのか、生理のせいで泳げなかったり、お風呂にも入れなくなるのか、など自分の中で考え得る疑問が一斉に頭を駆け巡った。

サドルについた血をふき取って証拠隠滅も考えたが、いやいや、このまま隠してもまた来月には来るのかと考え直した。

「好きなもの用意しようか」報告した母からの一言に安心した

気まずさを感じつつ家に入り、台所で夕飯の準備をしてくれていた母に報告すると、「おめでとう!赤飯食べる?あ、でもあんた赤飯嫌いだよね、なんか好きなモノ用意しようか」とあっけらかんと言われた。その一言があったおかげで、「なんだ大丈夫か」と一気に安心感が私を包んだ。

また1週間ぐらい経ってから双子の姉も実は同時期に初潮を迎えたことを教えてくれた。「さすが私たち双子だな」と大人になる恐怖や不安は何処、双子の神秘を呑気に感じたのであった。

幼稚だと恥じていたものに大人への一歩を踏み出した証の血がついていたあの光景が、いまだにまざまざと瞼に浮かぶ。でもあの出来事があったからこそ、女性としての私がいるのかなとも思う。

小学校4年生の自分に言いたい。「大丈夫、怯えることじゃないよ」。
今は将来結婚も考えている人とお付き合いをしている。子供を持つか否かなど前向きな話し合いも進めている。
将来自分の娘が初潮を迎えたら、何を用意してあげようかな。