「生理前爆食」「満腹どこ?」「生理前のお約束」
YouTubeのサムネイルで、最近よく見かけるこんな文字。机の上に大量に盛られたスイーツやパンをかぶりつく女の子の画像の上に、荒れた字体で張り付いている。
生理前、生理中の食欲のコントロールのし辛さは、多くの女の子が共感できるだろう。
せっかくダイエットを頑張っていても、生理前の食欲に負けて全てが嫌になる。ダイエット中の生理ほど、恨めしいものはないと、私も今まで何度も思った。

大学生の頃、自分を変えたい思いが強いあまり、無理なダイエットに走ってしまった私は、その反動が生理前に一気に来るようになった。
普段我慢している分の食欲が、生理が近づくと手に負えなくなる。頑張れば頑張るほど、生理前の暴食は止まらなくなって、生理に全部ぶち壊される。
そして生理が終わると、生理前の暴食を打ち消すために、無理な食事制限を強いる。するとまた生理前に暴食。負の連鎖だった。
なんで私、生理なんかに負けちゃうのって、自分の意志の弱さを責めて、シャワーでごまかしながら涙を流した。

でも、それを繰り返して何ヶ月かすぎた時ふと、生理なんだからしょうがないじゃん、私のせいじゃない!って言葉がお風呂場で、シャワーに勝つくらいの声量で口をついた。
たぶん自分自身に責められすぎた自分が、やけになって出してた答えだったと思う。
だけど、それをきっかけに私は、生理は、自分の身体に起こる現象だけど、自分とは違う誰か、みたいに思ってみることにした。
そしたら、いつのまにか生理を、今までと全然違う風に捉えることができるようになっていた。

生理は私の中にいる別人と考えたら、生理前が少しだけ楽しみに

まず、今までの私が、生理で頑張れない時に自分ばっかり責めていたのは、生理を私の一部と考えていたからだ。
でも、生理は私の内側に住んでいる別の誰か、と考えてみたら、「しょうがない」って思えるようになった。自分とは別物だから、私の手には終えませんって潔く諦めることで、自分の心を守ってあげられるようになったのだ。

そうするとだんだん、生理前が少しだけ楽しみになったりもした。
止められないほどの食欲が湧くってことは、生理前は普段より、美味しく感じるってことだ。だから、美味しそうなスイーツは、せっかくなら生理前に食べようって、とっておく。そして生理前に心置きなく食べる。
自分では手に負えない食欲に無理に抗う必要もないし、罪悪感も少なくなった。
そして逆にもし生理中なのに食欲をコントロールできたり、何か頑張れた時は、生理中にも関わらず私すごい!っていつもより自分を褒めてあげられるようになった。

そんな風に考えられるようになると、生理は、女の子を邪魔する試練なんかじゃなくて、普段頑張ってる女の子を、月に一回だけ体の内側から甘やかしてあげるための制度に思えてきた。

生理は、頑張れない時の理由にしていいよ、って体の内側からの声が聞こえた気がした。
頑張れた自分をもっと褒める材料にしてもいいよ。自分を甘やかす、好きな理由に使っていいよって。

月一の不快感を、自分に合う捉え方で利用すればいいのだと思う

前に年上の女性に、生理痛が辛いって話したことがあった。
そしたらその女性は、「でも女の人だけが赤ちゃん産めるんだから、いつか赤ちゃんを産むために、月に一回耐えるのよ」って言った。その人にとっては、赤ちゃんを産むことこそが女性の特権で幸せなことであって、それに引き換えなら生理の辛さを我慢できると思える理由だったのだと思う。
でも女の人がみんな、赤ちゃんを産むことが最高の幸せであるとは限らないし、当時高校生だった私は、その前に好きな人と出会って、結婚してって、赤ちゃんを産む、にたどり着く道のりは、果てしなく遠く思えた。
赤ちゃんを産むために生理は必要って言われて、理解はできるけど、正直そんなに遠くて“いつか”という理由で、私はこの月一の不快感を納得させることが難しかった。

自分に合う捉え方で、利用すればいいのだと思う。私は、月一で自分を甘やかすための理由づけと捉える方が腑に落ちた。理にかなっていないとしても、自分が納得できればそれでいいような気がした。

生理で知った不快感や不安があり、なければ知らなかった温かさもある

生理が来るようになって、私は知った。
立ち上がったときのなんとも表現し難い不快感も、
体育座りの全校長会が長引いたとき、プリーツスカートの後ろが気になって仕方ない不安も、
友人がハンカチに包んだそれを、こっそりくれたときの温かさも、
お湯で下着を洗っていた洗面所で、血は冷たい水の方が落ちるのよって教えてくれた母の偉大さも、
生理がなかったら、知らなくてもよかった。
生理がなかったら、知ることはなかった。

私たちの意思に関係なく起こる現象だから、しょうがないから、自分の捉え方次第で、なんとか納得させて、付き合っていくしかない。
こっちだって、好きに利用してしまっていいのだと思う。