11歳にもなって、うんち漏らした……?
こっそりパンツを替えたのに、新しいパンツにもまたついてる。慌ててトイレットペーパーで拭いて、違和感を覚える。あれ、これ、お尻というよりは……。

トイレから母を呼ぶ。あの時の母の、悲しそうな顔が今でも忘れられない。
「それ、生理だよ」

身長が低い11歳の私に生理が来た。もう伸びないのかと悲しかった

私の身長は低く、クラスで背の順に並ぶと、2番目の位置だった。
地域の行事に参加したり、公園で遊んだりしているときに、大人に年齢を言うと驚かれることが多かった。小学校低学年に見えていたのだろう。

給食を食べるのが遅く、逆上がりもできなかった。母は、娘はゆっくり成長していくものだ……と思っていたのかもしれない。

しかし、生理が来た。母は生理ナプキンを用意してくれた後、厳かな顔で言った。
「生理が来ると、成長ホルモンの働きが弱まるの。もう身長が伸びないかもしれない」

衝撃だった。母曰く、伸びても数センチらしい。私の身長、低いままなのか。
なんで生理になっちゃったんだろう。11歳の私は、ひたすら悲しかった。

夏になり、生理でプールの授業を見学することになった。「はなちゃんも、アレ?」と聞いてくる女の子たちはみんな背が高くて、メゾピアノやエンジェルブルーを着こなす、お洒落な女の子たちだった。
「うん」と小さく頷いてそっと隣に座った。ちらっと女の子たちを見る。

体操着から胸が膨らんでいる、ような気がする。実は私もこの頃、膨らみ始めていた。
低学年に間違われる顔立ちと身長なのに、胸が膨らんでいることが、ものすごく恥ずかしかった。見学スペースにいるのも、とても場違いな気がした。猫背で歩く癖がついたのは、その頃からだ。

生理が来たせいで、私は胸が膨らんだんだ。背の順も、気づいたら先頭になっていた。胸の膨らみよりも、身長が欲しいと思った。悲しくて恥ずかしかった。
そして、私は中学生になった。身長は、初潮が来てから3センチ伸びて、止まった。

みんなそれぞれ悩みがある。身長も胸も、不思議と気にならなくなった

中学生になると、男子の身長の伸びがすさまじい。女子も伸びる子は伸びる。とてもうらやましく、置いてきぼりを感じたこともあった。

しかし、「私、生理来たことがないの。早く来てほしい」と言う友達や「はなちゃん、背が低くていいなぁ」と言う身長168センチの友達ができて、みんなそれぞれ、悩みを抱えていることを知ったら、少しずつ気にならなくなった。

胸のことも、不思議と気にならなくなった。「はなちゃん、胸あるのうらやましい~」なんて友達に言われて、逆に誇らしくなった。

それでも、高校生になって、博物館に入館するためのチケットを買おうとしたら、小学生料金を払うよう受付の人に言われた時は、恥ずかしくなった。その話を、仲の良かった高校の先生に愚痴ったところ、
「17歳で7歳に間違われるのは嫌だろうけど、27歳で17歳に間違われたら嬉しくない?」と言われた。
「いやいや、嬉しくないよ~」と笑いながら先生に言った。

生理が来たのは成長の証だから。悲しまないでと11歳の私に伝えたい

それから10年が経ち、私は、27歳になった。

居酒屋に入ると、たまに年齢を確認される。誇らしげに免許証を出す。そして「よっしゃ」と心の中でガッツポーズをする。

初潮が来たときの11歳の私と、その時の母と、17歳の私に伝えたい。

27歳の私は、身長が低いことで若く見られて、喜んでいるよ。胸はもっと大きくならないかなぁ……と思って、バストアップの筋トレをこっそり試しているよ。
なんて伝えたら、当時の母は安心し、17歳の私は「先生の言った通りだ」と納得すると思うが、11歳の私はきっと恥ずかしがる。

でもせめて、生理が来たこと、めちゃくちゃ悲しまないでほしい。ここまで歩んできたという、成長の証なのだから。

もし、私がいつか結婚して、娘ができて、娘に初潮が来たら「大人になったね。成長したね」と、笑顔で声をかけたい。赤飯を炊くのは、私の娘なら恥ずかしがりそうだから、炊かないと思うけど。

そして、おばあちゃんになった母にも伝えて、娘の成長を一緒に喜ぶんだ。