「オフ会(ネットの人とネット上ではなく現実のどこかで会うこと)するなら、メイクできるようにしないと!」
そう思い立って高校3年生の梅雨、私は母とドラッグストアに行った。
オフ会をきっかけにメイクを始めた。メイクとは運命の出会いだった
私はいわゆるオタクだ。アニメや漫画、ゲームなどの二次元系を好む。
小説を書くことも好きで、ネットを通じてオタクの人とコミュニケーションを取るのが日課だった。
オタクの人と交流すれば、度々あがる「オフ会」の文字。オフ会で、他のオタクの人とお茶をしながら語り合ったり、ショップでオタクグッズを買ったりする。思えばそれがメイクを始めたきっかけだった。
当時、私は高校生。周りには20歳を超えた大人ばかり。私は「メイクをしないと浮いてしまう」という焦りから、メイクの練習をスタートした。
手軽にニキビを隠せて、経験を積めば手軽に綺麗になれる。そんな魔法のようなツールを私は研究せずにいられなかった。
ニキビ体質の私は、学生の頃から男子に少しからかわれたことがある。
当時も今も、からかわれたこと自体は気にしていなかった。だって体質だから。生活習慣を治しても治らないときはダメなのだ。
そんな自分にとってメイクはまさに運命の出会いだった。
メイク道具を3通りくらい買ったところで、節約家の姉に怒られたことは、実は今でも引きずっている。
メイクは楽しい。良くも悪くも薄い顔に生まれて誇らしい気持ちになる
今現在のメイクとの距離感。
コロナ禍ということ、ニキビ体質ということであまりメイクをする回数は多くない。
オタクの人とのコミュニティからは脱し、今は在宅で仕事をしている。もちろんすっぴんで。
そんな私は、恋人とデートをする日に合わせ、週に1、2回メイクをする。
ナチュラルな服装のときはアイシャドウを薄めに、ピンク色などをあしらったガーリーな服を着るときはハイライトやシェーディングをしっかりと。
そのとき行く場所、そのときの気分で服装やメイクのテイストを決める。
メイクは楽しい。顔全体をキャンバスにして絵を描いているよう。
唇の血色が薄い私は、最後にリップをひとさしすることで、がらっと印象が変わるのだ。
メイクをするときは、良くも悪くも薄い顔に生まれて誇らしい気持ちになる。メイクのしがいがあるから。
私は人のため、自分のモチベーションのために、明日もメイクをする
年月が経つにつれ、メイクはシンプルなものに変わっていった。思い切ってメイク道具をほとんど断捨離し、最低限の種類でメイクしていく。
それだけメイクが定まってきたということなのだろう。
現在は姉にもメイクを褒められるようになった。恋人は「すっぴんでもいいのに」って言ってくれるけど、やはり好きな人の前では可愛い姿でいたい。
どうやら恋人は薄い顔の方が好きらしい。いつか「メイクしてるときと、すっぴんの両方とも好きだよ」と言わせたい今日この頃。
もちろん自分のためのメイクでもありたい。人のためのメイクだと、どうしても行動が他人軸になってしまう。だから私は自分がきれいになるために、メイクをするのだ。
私は人のため、そして自分のモチベーションのために、明日もメイクをする。