ある日、「ライブ配信アプリで配信者をやってみませんか?」という内容のDMが届いた。
興味を持ったので、ライブ配信アプリのことをよく調べ、担当者の方からの説明をしっかりと聞き、疑問に思ったことはすべて聞いた。
笑顔とコミュニケーション能力を武器に、美容系ライバーデビュー
ライブ配信なら、YouTubeのような編集作業は要らない。これが大きな決め手だった。
元々、美容系ユーチューバーの動画をみることが好きで、自分もその世界に飛び込んでみたいと思っていた。
「美容系ライバーっているのかな?いないのならわたしがなればいいじゃん!」
そんな考えを持ちながらライバーデビューをした。
正直、最初は若い子ばかりで戸惑ってしまった。ライバーのほとんどが20代前半なのに対し、当時わたしは28歳。
埋もれずに済むにはどうすればいいのか。やはりアラサーがやるコンテンツではないのだろうか。
いやいや、そんなことはないはずだ。わたしの憧れの美容系ユーチューバーの河西美希さんは30歳を超えている。夢や新しく挑戦することに年齢は関係ないとを彼女から教わった。「大丈夫だよ!」と背中を押してもらえた気がした。
そうだ。わたしの武器は「美容の知識」と「コミュニケーション能力」と「笑顔」だ。ライブ配信は画面の向こう側の人のコメントに反応し、お話をするというもの。コミュニケーション能力は必ず必要になってくる。
まずは「笑顔」と「コミュニケーション能力」でリスナーを増やしていくことにした。
絶対にグランプリを獲ってみせると誓い、コンテストに応募
とても面白い世界だった。話すことが好きなわたしには向いているコンテンツだった。
リスナーは着実に増えた。慣れてきた頃にコンテストに出てみようと思った。
そのコンテストの名前は「B・M・C」。ビューティ・モデル・コンテストの略だ。
応募開始と同時に迷わずエントリーをした。絶対にグランプリを獲ってみせると誓った。
審査期間は1ヶ月間。審査はすべてライブ配信アプリ内で完結する。結果からいうとグランプリを獲ることはできなかったが、配信アプリ内での順位は4位。その他に企業賞や協賛賞も受賞した。
だけど、わたしが目指していたのはグランプリ一択。号泣するくらい悔しかった。
リスナーと雑談しながらメイクをしたり、ちょっとしたメイク講座をしたり、それを色んな人にみてもらい、コメントをもらい、アイテム(=投げ銭)をいただく。順位はアイテム数で決定する。
グランプリを獲れなくて酷く落ち込んだが、リスナーや応援してくれていたひとたちから、「メイクに興味を持った」「楽しいライブ配信をしてくれてありがとう」「男だけど美容に関心をもった」「何気なく話していたことが心に響いたからこれからも応援する」そういった言葉がたくさん届いた。
わたしの美容への想いは、ちゃんと画面の向こう側に伝わっていたんだ
わたしが発信したかったことや想いはちゃんと画面の向こう側の人たちに伝わっていたんだと思うと、グランプリだけにこだわっていた自分が途端に恥ずかしくなった。
「その人自身の美しさを引き出す」「自分のことを好きになる」。そのための美容。わたしが伝えたかったのは、このことだった。
実際のところ、昔のわたしはコンプレックスばかりで、自分に自信が持てなかった。そんな自分を変えてくれたのは美容だった。
思春期、ニキビだらけの肌が本当に嫌で、スキンケアの方法をとことん調べ、肌がきれいになったのはスキンケアのおかげだった。肌がきれいになると、メイクが楽しくなった。今でも肌の調子がいいと気分が明るくなるし、メイクが上手くいった日は何でも上手くいくような気がする。
ライブ配信を始めて、人に美容のことを発信することで、自分とメイクとの距離感もわかった。メイクとの距離は近いような気がして遠い。それはメイクには正解がなく、わたしを魅了し続けるからだ。
わたしはメイクに恋をしている。この先も一生メイクに魅了され、惑わされ、それでも好きで堪らないのだろう。
近くて遠い、最高の片思いだ。