きらきらのアイシャドウに艶のあるチーク、ほんのり赤いリップを塗るのが私の朝のルーティーン。
男兄弟と育ち、運動一筋でおしゃれに無頓着なまま高校生を終えた私は、母と同じ美容室で昭和センスのカットをされるのが全然苦にならなかった。
もちろん化粧品には触れたことがないし、化粧水もつけないような女子高生。今どき男子中学生も化粧水をつける時代なのにね。
兄弟にブスだと言われて育ち、兄のお下がりを着て育った私は、いつしかピンクやレース、花柄といった、いわゆる「女の子が好きそうなもの」とカテゴライズされたものに嫌悪感を覚え、「私なんかがおしゃれしたって……」と思うようになった。メイクもそのうちの一つだった。

成人式前撮りでされたこれじゃないメイクが、コスメオタクの第1歩に

大学生になり、周りの女の子はみんなメイクをしていて、一人だけ取り残されている気持ちになった。工学部だったので派手な見た目の子は少なくて、みんな白いファンデにピンクのチークを目の下に入れて、派手すぎない艶のあるアイシャドウに赤いリップを塗っていた。
「みんな可愛いけど、みんな同じじゃん」と強がった。
1年後、成人式の前撮りがあり、メイクをしたことのない私は美容師さんに全部おまかせした。
オレンジのチークに緑のアイシャドウ、真っ赤なリップ。メイクはできないけれど、絶対にこれじゃないと思った。チークなんて頬の真ん中で、まるでバイキンをやっつけるパンみたいだった。自分でできないから仕方ないと言い聞かせたけれど、やっぱり悔しくて、家に帰ってひっそり泣いた。
私がおしゃれをできなくて辛いのは、他でもない私自身だったと気づいた。
それから、成人式までにメイクを上手くなる!を目標に、メイクの勉強を始めた。コスメオタクの第1歩だった。

知れば知るほどメイクは私を鼓舞させる、エネルギーチャージ

勉強し始めて、メイクには旬とパーソナルな物があること知った。なるほど、みんな目の下にチークを入れてたのはおフェロメイクだったのね、と初めて理解したし、自分がイエベでブルー系の色は似合わないことも初めて知った。
早すぎる旬を追いながら、ご褒美にデパコスを買って、肌悩みに合う化粧品を探すのが楽しかった。いつしか、おしゃれへの嫌悪感がなくなっていた。
悩みといえば、試しに買った化粧品が合わなくて、けれど捨てるのが勿体なくて増えすぎたことくらいだった。
女友達から「うに子ちゃん、可愛くなったね」と言われるのが嬉しくて、調子にのって髪型や服装もガラッとイメチェンしてみた。ボサボサに伸びていたストレートの髪を整えて巻き、服装もボーイッシュで暗い色合いが多かったけれど、明るい花柄のブラウスやスカートも履くようになった。コーディネートの幅がクールなものからかわいいものまで増えたら、おしゃれがとても楽しくなった。
今は社会人になり、出社日のメイクは仕事へのエネルギーをチャージする手段になった。工学部を卒業して、事務員さん以外男性ばかりの会社に入社した。
彼らはいつでもエネルギーに溢れていて、私も負けじと食らいついていくのに精一杯だ。
そんな私を鼓舞するために、今日もきらきらのアイシャドウに艶のあるチーク、ほんのり赤いリップを塗る。