私は明らかに化粧っけがない方である。友人のうちの何割かが中学生の時に、友人のほとんどが高校生の時にメイクに目覚め、残った人も大学デビューの名のもとにメイクの研究を始める。私はこれらのどのタイミングでも、メイクに興味を持たなかった。
むしろ、母が私をデパートへ連れて行こうとするたびに、「どうしてメイクなんてものをしないといけないのか」と反発した。
大学入学当時はメイクに興味がなかったどころか、アンチ気味だった
メイクというのは、本来の容姿よりも魅力的にするために行うものだと思うが、十何年も生きてきて自分は可愛さで勝負するような容姿でないことは分かっていたし、唯一可愛いと思ってほしい彼氏はメイクをする人があまり好きではなかった。こういうわけで、大学入学当時はメイクに興味がなかったどころか、アンチ気味の心持ちだった。
しかし、大学3年生になった今、就活というものを意識せざるを得ない。就活の場はもちろんのこと、社会人の女性としてメイクは一種のマナーのようである。
どうやら、メイクによって透明感を出せば清潔感が出て、アイメイクを上手くすれば説得力のある表情を演出できるらしいのである。これは面接試験を乗り越えるうえでは有効な手法のようである。だから、私は自己分析やウェブテストの勉強など就活の一環として、メイクの勉強を始めた。
就活の一環として「メイクの勉強」を始めた私は、とにかく調べた
メイクを始めるには、まず購入するところからである。メイク道具の費用はできるだけ抑えたいと思ったが、安くても使いにくければ初心者の私は困ってしまう。だから、私はいっぱい調べてみることにした。
まず、自分のパーソナルカラーを診断し、どういう系統のメイクをすればいいのかを把握した。そして、そのメイクができる道具を探すのだが、初心者でも使いやすいかどうかの本当のところは化粧品メーカーのHPでは分かり切れない。
だからSNSでの口コミを片っ端から読んで、ユーザーの声を拾って購入品を決めていった。この過程はなかなかに時間がかかったが、あれだけメイクに疎かった私でも自然と専門用語やメーカーの名前を覚えるきっかけになった。
しかし、メイクは買ってからが大変である。最初は、チークやアイシャドウを薄くつけすぎたり、逆にアイブロウを塗りすぎたり、マスカラがはみ出たりして、いかにも初心者という顔が出来上がっていた。
繰り返しメイクの練習をし、今となっては「当たり前」になった
それでも、私は就活という目標があってメイクを始めたので、ここで食い下がるわけにはいかなかった。チークは何回塗ればちょうどよくなるのかを研究や、マスカラを塗る練習を何度もした。この繰り返しの練習は、次第に習慣となり、今となっては人と会うと気にはするものという当たり前になった。
私にとって、メイクが当たり前になるというのは大変革である。もともとメイクとの間に心理的距離があり、そのせいでメイク道具に触れてこなかった。しかし、一度メイク道具を購入し物理的距離を近くしてみると、少しずつメイクへの抵抗が薄れてきて習慣化していったのである。
ただ、今でもメイクのことは好きではない。もちろん嫌いでもないけれど。今はメイクと友達になろうとしている真っ最中なのだと思う。きっと私は、メイク人生の1学期をやっと過ごせているのだ。