新型コロナウイルスが流行し始めた2020年5月、わたしの恋が始まった。
何年か前から顔見知りだったその人に、予想外の恋愛感情を抱いてしまった。その相手は、女性用風俗、通称「女風」のセラピストと呼ばれる男性だ。
最初に出会ったのは、まだ残暑が厳しい2018年9月初旬だった。
わたしは、当時都内のシティホテルの正社員として忙しく働いていた。その頃は、夕方から終電ギリギリまで働く遅番シフトが多かった。仕事のストレスと、何か物足りない毎日に刺激を求めていた。誰かと遊ぶことでその欲求を満たしたくても、日付が変わる頃まで仕事をしていることが多かったので、仕事終わりに遊びに付き合ってくれる友達もいなかった。

女性風俗店のホームページで偶然どタイプの彼を見つけ、すぐに指名

そんな時に、偶然見つけたある女性用風俗店のホームページで、どタイプの男性を見つけた。それが、今わたしが恋をしている彼だ。
写真を見て、「すごい、タイプすぎる!」と心の中で叫んだ。
まだ声を聞いたことも、メッセージのやりとりをしたこともなかったけれど、どうしても会ってみたいと直感的に思ったわたしは、すぐにお店のホームページから彼を指名で予約した。
今思い返してみれば、我ながらすごい行動力だと思う。そして、初対面を果たし、約2時間のカラオケデートを楽しんだ。初めて男性と密室で手を繋いだり、ハグをしたりして心が弾んだ。

その幸福感が忘れられず、その2週間後に、また彼を指名してカラオケデートを楽しんだ。深夜にイケメン男性と密室で過ごすことで、わたしは何だか大人の女性になれたような気がした。
彼と別れてひとりタクシーに乗って帰宅した夜、誰にも言えない大人の秘密ができた嬉しさと恥ずかしさで胸がときめいた。でも、この頃は全く恋心を抱いていなかった。
「お金で結ばれた関係」と割り切っていたからだ。

再会した彼とホテルへ。恋人との甘い時間を擬似体験できて嬉しかった

その後2年間、TwitterのDMでやりとりをすることはあったが、直接会うことはなかった。理由は、お金を払ってイケメン男性との甘い時間を買うことに、虚しさを感じたからだ。また、彼と出会った年の秋頃、わたしは職場の人間関係と長時間労働で、適応障害になったことも原因だ。
この間にも、「もうすぐ誕生日だから売り上げのために来て欲しい」と何度か営業DMが来たことがあったが、全く彼に興味がなかったので既読スルーしていた。
そんなわたしの想いが変わり始めたのが、2020年5月だった。まだ新型コロナの実態が不明だったこの頃、わたしはふと彼に会いたくなって、久しぶりに彼を指名して会うことにした。

待ち合わせたのは、新宿歌舞伎町の東宝ビル前。久しぶりの再会を果たし、向かったのは歌舞伎町のラブホテルだった。
初めて男性と2人で行くラブホテルで、添い寝して、一緒にお風呂に入った。髪を撫でてくれて、優しく服を脱がしてくれた。どれも初めて経験することばかりで、刺激的でドキドキした。ずっと憧れていた、恋人との甘い時間を擬似体験できたことが、とても嬉しかった。
新型コロナの不安を感じつつ、わたしは長年の夢を叶えることができて嬉しかった。

退職金を使い疑似恋愛を何度も楽しむうちに、本気で好きになっていた

その頃、わたしは地元の倉庫でパートタイマーとして働いていたが、運悪くコロナ解雇にあってしまった。
そのストレスを発散するために、何度か彼を指名してラブホテルでの甘い時間を楽しんだ。人と密室で会うことで、コロナに感染しないかという不安もあったが、自暴自棄になっていたこともあって、貰った退職金を使って、彼と会っては疑似恋愛を楽しんでいた。
そして、何度も会っているうちに、本気で彼のことが好きになっていく自分に気づいた。

彼は確かにイケメンで頭も良くて、人気セラピストだ。でも、わたしから見て、接客はそこまで完璧ではないし、天然でおっちょこちょいなところもある。
誤ってスカートにジュースをかけられたこともあるし、予約日時を間違えられたこともある。自分の話をいっぱいしてしまって、わたしが聞き役になることがある。どっちが接客してるんだろう……って心の中で思ったことがある。
でも、上手く言葉では言い表せないけれど、わたしは彼が好きだ。「この人と結婚したいな」とか「この人との子どもだったら欲しいな」と思ってしまう。
周りの人に相談すると、「他にも良い人がいるよ」とか「それはその彼しか見えていないからだよ」と言われた。

彼と会うには最低25000円が必要。この恋のために頑張って働こう

そこで、色々な異性に会ってみようと思い、マッチングアプリを始めた。でも、何人かやりとりしたけれど、どうしても好きな気持ちが湧いてこない。電話で話してみたいとも、会ってみたいとも思えない。
だったら自分の「好きな気持ち」に正直になって、彼を振り向かせるために自分磨きを頑張ろうと思った。
でも、1つ問題がある。それは、彼と会うための「お金」がないことだ。彼を指名して会うためには、最低でも25000円必要だ。
昨年6月に運悪くコロナ解雇にあってから、貯金とフリーライターの収入で何とか生活をしているわたしにとっては、かなりの出費だ。
コロナが憎い。コロナ解雇にさえ合わなければ、彼と会って、少しでも恋を進めることができたのかもしれない。でも、どうしてもこの恋を成就させたい。
そこで、わたしはある決断をした。それは、ナイトワークの派遣会社に登録することにした。もともと、ナイトワークに憧れはあったけれど、勇気がなくてなかなか踏み出せなかった。
でも、自分のため、そして彼と会うために頑張って働こうと思う。コロナで先の見えない不安はあるが、わたしの幸せな未来のために、一歩踏み出そうと思う。