あの時はまだときめきがあった。
あの頃はまだ前に進んでいた。
今は……。

クリスマス、誕生日…。素敵なデートで私をときめかせてくれた彼

20代前半に今の彼と付き合い始めた。私は彼からの告白を一度断ったが、「いつか振り向かせてみせる」と彼は言い、本当に私を振り向かせた。

付き合うために彼は私へ様々なアプローチをした。仕事場まで迎えに来たり、おやつを用意してくれたり、ゆっくり休めるようにとアイマスクを用意してくれたり、彼は惜しみなく私に尽くしてくれた。そんな彼に救われたことも多く付き合うことにした。
彼は付き合ってからも私を大切にしてくれた。また、ときどきサプライズをしかけてくれてときめかせてくれた。

クリスマスの日には、おいしい料理のおもてなしの他にプレゼントを用意してくれた。プレゼントの袋を開けるとリボンをつけたかわいいハリネズミのぬいぐるみが入っていた。
私がかわいいもの好きだと知っていてぬいぐるみを用意したんだろうと、家に帰ってぬいぐるみを愛でていると、リボンの下に光るものがあった。ネックレスだった。本命のプレゼントはハリネズミの首にこっそり隠してあったネックレスだったのだ。
驚きの後に感じたキュンとときめいたあの瞬間は今でも覚えている。

私の誕生日には、完全予約制のレストランへ連れて行ってくれた。料理一つ一つがきれいでおいしくて、それだけで充分満足だった。
しかし、このレストランにもサプライズが仕掛けてあった。スープを飲み干した時に思わず笑ってしまった。皿の内側におめでとうの文字があったのだ。レストランのお皿は手作りで、誕生日用に文字が刻まれているものを用意してもらったようだった。そのほかの料理も食べ終わるとありがとうのメッセージが書かれていて、飽きることなく楽しめた。

最後には誕生日ケーキも用意されていた。ケーキには名前のプレートもついていて、写真を撮っていると厨房から店主が出てきた。店主は大きな花束を持ってきて「誕生日おめでとう」と言ってくれた。周りからは拍手がおこり、照れくさかったけどここまで用意してくれた彼にまた惹かれた。

付き合って3年。彼が30歳になったら結婚する予定が…

そして彼と徐々に距離をつめ、私は20代後半になり結婚を意識し始めた。彼と付き合い始めて3年、そろそろ結婚してもいいのではないかと感じ始めていた。
彼が30になる頃には結婚しようと話をして、結婚式場を一緒に見に行ったり、どんな結婚式を挙げたいかの話をしたり、少しずつ前進していった。

彼のご両親にいつあいさつに行くか、将来どこに住んで何をするか、いろいろ先のことを考え始めた時、コロナが広がっていった。
すると途端に何も進まなくなった。彼は何もしなくなった。

「コロナだからね」を理由に、全てが先送りになり、私のときめきが消えていった。
30になるころに結婚しようと話していた彼は30になった。しかし、彼は「コロナだから、ご両親へのあいさつはやめておこう」「結婚式場見るのもやめよう」と何も前に進まなくなった。

スピードが問題ではないけど、コロナ禍でも先へ進むことはできるはず

クリスマスの日も「コロナだから家でのんびりしよう」と静かに過ごした。
誕生日の日も「コロナだからあんまり出かけてなくて、通販か何かで欲しいものあったら買ってあげようか」とプレゼントを用意してくれることもなくなった。
コロナだからコロナだからと、ずるずると何もやらない彼になった。ときめきを感じた彼が遠のいていった。

私の友人はコロナ禍でも付き合い始め、結婚をし、出産もしていた。1人や2人ではない。何人もだった。私は彼と長く付き合い、お互いの時間をとっていても、前へ進まずどんどん置いてかれていった。
スピードが問題ではないが、コロナ禍でも先へ進み、幸せをつかんでいく周りの様子を見ていると、どうしても……モヤモヤせずにはいられなかった。

私はコロナ禍でも先へ進みたい。ときめきたい。
だから、今度はコロナ禍でも私が引っ張ってときめかせようと思う。コロナを理由に立ち止まってるあなたとは違う。私はコロナ禍でも強く前へ進み続けるところを見せる。
いつかあの時のように、私をときめかせて前へ進もうと思ってくれるように。