彼の作る「おいしいご飯」が私を幸せにしてくれるから、結婚した

私の夫は料理上手だ。冷蔵庫の中にあるものでパパっと、本当においしいご飯を作ってくれる。大きな手で野菜をみじん切りにするその手さばきは、もうなんていうか芸術だと思う。
私が彼と結婚した理由の一つが、飯がうまい! からだ。ていうか、それがかなり大きな理由だ。
夫が初めて私に作ってくれた料理は確か、オムライスだったと思う。付き合って間もない彼の家で、ゴロゴロしていた昼下がり。なんかお腹すいたなあと思いつつも、私は料理ができないのでただじっと我慢していた。
そんな私を見かねた彼は、キッチンに向かい、手慣れた様子で調理を始める。バターで炒めたふわとろ卵とチキンライス。鶏もも肉をたっぷり入れて、透明になるまで炒めた玉ねぎを合わせる。ミックスベジタブルもふんだんに。
ほかほかの出来立てをスプーンですくって一口。鼻から抜けるバターの香りと卵の甘みは衝撃のおいしさだった。
私の実家のオムライスはクレープ生地みたいなうすい卵焼きで、しかもチキンライスは鶏むね肉だった。忙しい中、母が作ってくれたのだから文句ばかり言っていられないが、パサパサの卵が口の中でモサモサするし、ついでに鶏むね肉もパサパサだ。
大好きな卵の半熟部分をとっておいて、終わり良ければすべて良しってことで最後の一口をゆっくりじっくり味わって食べた(好きなものを最後までとっておくタイプです)。だから私はあんまりオムライスが好きではなかった。冷蔵庫になんもない時に出てくるありあわせ料理だったのだ。
彼が作ってくれたその時も冷蔵庫に何もないから、とりあえず彼が作ってくれたのがオムライスだった。でも、今までのがっかりありあわせ料理とは違う。卵の半熟部分を最後までとっておく必要もない。最初から最後までおいしい。
簡単な材料と手順でこんなにおいしいご飯が作れるなんて。オムライスおそるべし。まあ私が料理をしてこなかった裏付けになってしまうが、料理が苦手な私からすると一手間も二手間もかかっているような高級料理に思えた。
その後も夫は、私に料理を作り続けた(自分もやれよ)。恋人から夫婦となり、より私の好みを把握した夫の腕前にさらに磨きがかかる。
カレー(最近はスパイスの調合から)、生姜焼き、鯛の炊き込みごはん、筑前煮、牛肉とピーマンのオイスターソース炒め、手まり寿司、冷やし中華、トマトのカプレーゼ。近ごろはアジやハゼを釣ってきて、捌いてフライにすることもある。
くたくたに疲れて帰ってきて玄関を開けた時、幸せな香りが出迎えてくれると、子どものようにテンションが上がってしまう。夫の周りをぐるぐる回り、香りをつまみに缶ビールのプルタブを引く。ぐびぐびっと、つい夫より先に飲んでしまう。
こんな妻でいいんかなーと毎回思うけど、いいもなにも私は料理が苦手で、彼は料理が得意なんだからそれでいっかーとご都合解釈をしておこう。
彼が作る料理は本当に一般的な家庭料理だ。よく知っていて懐かしさのある味だ。どんなに腹が立っていても、涙がこぼれていても、単純な私は夫の料理を食べればだいたい機嫌がよくなる。ご飯のパワーは偉大だ。すごい飯だと思う。
今日は、夫がとうもろこしを買ってきた。朝もいだばかりだというそれは、生で食べてもおいしいらしい。皮をむいてかぶりつき、口いっぱいに広がる甘さを堪能する。今日は彼の腕の見せ所はない。
だけど二人並んで食べるとうもろこしは、確かにおいしかった。「歯に挟まる」と文句を言い合いながら、なーんか幸せだなーと思う。
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