もう無理はしない。そう決めて作った初めての手料理は「冷凍うどん」だった

＃06　初めての手料理

皆さんこんにちは！助産師のシオリーヌです。
いつも #結婚生活A面B面 をご覧いただき、ありがとうございます。

先日このエッセイの編集をしてくれている編集者さんと打ち合わせの機会があったのですが「読者さんからも好評なんですよ」と言っていただいて、ホッとしました。
その際に編集さんたちから「そろそろネタ切れとか大丈夫ですか？」とご心配いただいたのですが、つくしと共有しているネタ帳にはまだ12を超える書きたい話題がストックされていますので、「こりゃ一年は安泰ですな」ということでみんなで一安心したところです。

そんな今回は「冷凍うどん」に関するお話です。

毎日自炊なんて絶対無理な私の主食は「冷凍うどん」

私は料理があまり好きではありません。というか「毎日義務的にやらなければならないものとされる料理」が好きではありません。
料理をする技術はそれなりにあるし（本当だよ）、自分の気が向いた時にのんびり自由に作る料理はとても楽しいと思います。ただ、生活の中でやらなきゃいけない感を持ちながらしぶしぶ取り組まなくてはならない料理が、とても嫌いなのです。

一人暮らしをしている間は、1袋5食入りの冷凍うどんを主食としていました。
冷凍うどんって最高ですよね。お椀に入れて麺つゆとともにチンすれば3分で食べられるし、何より調理の工程で鍋などの洗い物も発生しない。
しかも最近の冷凍うどんのクオリティったら半端じゃなくて、讃岐うどんはツルツルしこしこ。卵や納豆をぶっかけてみればそれは紛れもないご馳走で、たった3分で準備したとは思えない美味しさです。

素晴らしき冷凍うどんをいつも冷凍室の右端に常備して、お腹がすけば即座にチン。
そんな生活を長いこと送っていました。

つくしに初めて手料理をご馳走する機会が訪れたのは、交際を始めて少したった頃。
私が一人暮らししていた部屋に遊びにきたつくしが家に泊まって行くことになり、翌朝の朝ごはんを準備することになったのです。

"女子力"アピールを自らに課して首を絞めるのは、もう辞めよう

私は悩みました。
頑張るモードの朝食でいくか、いつもの「冷凍うどん」でいくか。

過去の自分のパターンでは、初めて恋人に朝食をご馳走するなんて一大イベントではもうめちゃくちゃに張り切って、いわゆる”女子力”を遺憾なく発揮するために全力を尽くしていました。

お泊まり前日には普段は買いもしない塩鮭を買いにスーパーに走り、当日は相手より1時間以上早く目覚められるようセッティング。
起床したら準備した鮭を焼いて、贅沢に卵を3つも使って厚焼き卵を作り、彩のためにとお上品な量でほうれん草のお浸しまで作り始めて。（5束のうち1束しか使わずに冷蔵庫に放置するので、のちにシワシワになったほうれん草が発掘されるまでがセット）

丁寧に支度したおかずたちに炊き立ての白米とお味噌汁を添えて、温かいほうじ茶とお水を並べてテーブルにセット。
全てのセッティングが終わった頃に、相手が起きてくる……という段取り。

これ、もちろん頑張った時には喜んでもらえるのですが、お察しの通り相当無理をしているので到底長くは続きません。
付き合いが長くなるほどに「家庭的だねって思われたいッッ☆」みたいな気持ちは薄らいでくるし、なんなら自分だって誰かに美味しいご飯を用意されたいとすら思っている。
だけど相手には無理して頑張っていたなんて伝わっておらず、なんなら「家庭的で自然に料理をやってくれる子だったのに、変わっちゃったね……」と思われるわけです。

あれ、これ、最初に頑張んない方がいいんじゃね……？

と、27歳にして世界の真実にたどりついた私は、つくしへの初めての手料理でいつもの「冷凍うどん」を提供することに決めました。

並々ならぬ決意の乗った「冷凍うどん」は卵と納豆も添えて

まだ眠っているつくしを布団に残し、のそのそとキッチンに向かう。
冷凍室から取り出した冷凍うどんのビニールを適当に剥がし、さっと水にくぐらせる。
カチカチのうどんを微妙に深さの足りないどんぶりに立てかけて、麺つゆをちょろっと。
レンジで3分。取り出す頃にはうどんはほぐれて、どんぶりの底に沈んでいる。
生卵を真ん中に落とせるように麺をかき分け、中心に卵をオン。ついでに納豆も添えて。

恋人へ準備する初めての朝食。準備時間は5分弱。
こんなチャレンジをしたことのない私の気持ちは「そうだ、ありのままでいい」と「本当にこんなズボラ飯を披露していいのか」を行ったり来たり。

でももう後戻りはできないと、つくしを起こして一言。
「うどん、食べる？」

だらしないと思われるだろうか。もっと手の込んだものを期待していただろうか。
そんな不安をよそに、つくしは「美味しいね」と笑ってペロリと平らげた。

つくしとは、頑張らなくても一緒にいられる関係を築いていきたい。
お互いの得意なことと不得意なことをかけ合わせて、補い合えるパートナーでいたい。

そんな思いから選択した「初めから、いつも通りでいく」という行動を受け入れてもらえたことに、とてもほっとした。
飾らずに、頑張らずに、いてもいいんだなと思えた。

たかが冷凍うどん。されど冷凍うどん。
私にとってはとても大きな、思い出に残る挑戦でした。

• 後編は夫のつくしさんの視点で語ります：「家事としての料理は…」と言った彼女。「男は仕事、女は家事」という家族にしたくなかった

• シオリーヌさんの前回の記事はこちら：「名字とは何か…」人を哲学的にさせる改姓の苦行。結婚の「幸福感」で乗り切れる？

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