コロナ禍ではデートで外に行くことができない。外食や旅行をともに楽しんでいた私たちの生活は一変した。最初に新型コロナウィルスが騒がれ出してから1年半が経つが、未だに2人で遠出することは避けている。
しかし、悪いことばかりだったかと言われるとそうではない。
勤務形態が在宅勤務になり、長い通勤時間がなくなった。また、なあなあだった残業時間はパソコンのシステムで管理されるようになったため明らかに減った。そのため、余暇の時間が増え、平日の私たちの会話の時間はむしろ伸びたと言える。
こんな時代だからこそ、ずっとおしゃべりしていたい、つながりを大切にしたいと強く思った。
彼と私の間で、どんな言葉が流行ったかを振り返ってみることに…
昨年11月頃のことだった。洗濯を終えて一息つくと、1件のLINEが来ていた。
「流行語大賞がそろそろノミネート発表の時期だね」
2020年は「三密」という言葉がユーキャンの流行語大賞を受賞した。そのほかにも当たり前ではあるが「ソーシャルディスタンス」をはじめとする数々のコロナ関係の言葉がノミネートされていた。
私たちは、イベントごとがことごとくできなくなったこんな暗い世の中だからこそ、将棋や映画で生まれた新しい記録に関するワードに賞を取って欲しいと思い、2人で応援していた。
しかし、その願いは叶わなかった。
年末にその話をもう1度したとき、私たちの間ではどんな言葉が流行ったか振り返ってみようということになった。
コロナ禍で毎日欠かさずしたLINE。まず、その事実が嬉しかった
2人でLINEの履歴を見ながら、今年はどんな話をしたかを振り返った。毎日欠かさずしていたLINEは長すぎてスクロールだけではとても1月まで遡れなかった。その事実が嬉しかった。また、何度も同じ話をしても飽きないくらい、2人でおしゃべりをしている時間そのものを楽しめたと思う。
2人で通信対戦したスマホアプリや、一緒に夢中になったYouTube動画、オンライン飲み会をした共通の友人の名言などを見ながら、
「こんなこともあったね」
と笑い合った。2人の間でよく使った言葉を振り返ることは、そのまま私たちの1年間の思い出を振り返ることに繋がった。
最終的に、私がLINEで「おやすみ」をフリック入力ミスした結果生まれた「おやすま」が2020年の1年間を通して最も使われていたということが2人の間で共通認識となった。やっぱり、2人だけの流行語大賞は、2人だけの言葉がいい。
生きづらい時代だから、その中で見つけた私たちの幸せを大切にしたい
1日の終わりにお互いのことを思い、眠る前に最後に話す相手としてあなたを選んだというメッセージ。
コロナ以前は、残業が深夜まで及び、LINEをする余力もなく寝落ちしてしまうことも多かったが、勤務体系の変化によって「おやすみ」という回数は増えた。そして、他の人が見たら何でもないようなただのフリックミスがなんだか面白いという感情を共有できる喜びがあった。
もちろん、新型コロナウィルスの蔓延は絶対に肯定されるべきではないし、一刻も早い終息を願っている。けれども、こんな生きづらい時代だからこそ、その中で見つけた小さな幸せを大切にしていきたい。
私たちは今年も2人の中の流行語大賞を決めるつもりだ。すでに、上半期に生まれた数々の言葉が順次ノミネートされつつある。それらがみな、ポジティブなワードであることがたまらなく嬉しい。
今年、遅くとも来年には、私たちの間で選ばれる2人だけの流行語大賞が、平和な世界だからこそ生まれる言葉になってほしい。
1人の恋する女として、1人のこの世界に生きる人間として切に願っている。