「汗と青春」。そのキーワードを見た時、私の頭に浮かんだのは一昨年の夏休みの出来事だった。
あの一夏の経験は、照り付ける日射しよりも熱く、炭酸飲料のように爽やかな、兎に角楽しい思い出の一つだ。

「高校生活最後の思い出作りに」とダンスパーティへの参加を決意

それは高校生最後の夏休みを迎えた頃。私は「MJダンパ」なるイベントの情報を小耳に挟んだ。
「MJダンパ」とは「マイケル・ジャクソン・ダンスパーティー」の略である。その名の通り、マイケル・ジャクソンのファンが都内のライブハウスに集まって、DJが流す音楽に合わせて自由に踊って盛り上がるというイベントだ。

奇しくもその年は、マイケル・ジャクソンが亡くなってから10年という節目の年であった。小学生の時から彼のファンだった私だが、ファンが集まるイベントには行った事がなかった。そこで「高校生活最後の思い出作りに」とダンパの参加を決意した。
それから見よう見まねでダンスの練習を始め、有名な曲から知る人ぞ知る名曲まで一通り振付を覚えた。

その時はファン仲間が周りにおらず、いつも一人で練習していたのでとても寂しかったのを覚えている。
「振付を間違えたらどうしよう」「同じファンの人と仲良くなれるかな」
ダンパ前日は緊張とワクワクで眠れなかった。そして遂にその日はやって来た。

周囲のレベルの高さに驚くも、好きな曲が流れ始めた瞬間に私は…

マイケルの誕生日に近い8月末。私は乗った事もない電車に揺られ、都内のライブハウスへと辿り着いた。

ダンパが始まるまでまだ少し時間がある。私は彼の大ヒット曲「バッド」のコスプレジャケットを身に纏い、見知らぬ家を訪ねるかのようにフロアのドアを静かに開けて受付をした。

アルコール類が飲めない未成年を証明するリストバンドを巻き、フロアを見渡す。恐らくリアルタイムでマイケルを追っていたであろうファンの方々や、私と同年代と思われる若いファンがちらほらと目に映った。とても話しかける勇気なんてない。

やがて開始時刻になり、DJが音楽をかけた。スピーカーからは大音量でノリノリの音楽が流れる。ステージで踊りまくるファン達を見て、あまりのレベルの高さに衝撃を受けた。
あの中に入って踊るなんて、自分には絶対無理だ……そう思っていた次の瞬間、私の大好きな曲が流れ始めた。すると、私はステージに吸い込まれるように走り出し、他の参加者に混ざって踊った。そしてそこからは、ほぼノンストップでずっと踊っていた。

いつまでも忘れられない気持ちのいい汗。ずっと続けばいい最高の時間

ライブハウスに熱気がこもり、身体中が汗で火照る。疲れなんか気にしないで、無我夢中で踊った。後で聞いた話だが、大学生達が私に声をかけようとしたものの、私はダンスに夢中で声が届かなかったらしい。
彼らにはその後、無礼を謝った。午前から深夜まで、あっという間だった。

ダンパ終了後の二次会で、沢山の人が声をかけてくれた。思った以上に色々な人とお喋りして、仲良くなった。ご飯を食べながらマイケルの話題に花を咲かせたり、ダンスがきっかけで別のイベントのお誘いを受けたりと、その日はずっと楽しい事尽くしだった。ずっとこんな時間が続けばいいのにと本気で思った。

今、私はダンパで声をかけてくれた大学生達と同じサークルに入り、ファン仲間との交流も続いている。
あの時にかいた気持ちのいい汗が、いつまでも忘れられない。