別れが曖昧だった。「別れよう」と言われたわけじゃない。別れたかったわけじゃない。

今でも、“言わされたようなものだ”と思っている。だからなのかもしれない。私が勝手にこの物語に続きがあると期待していたのは。

私には明確な結婚の条件があり、唯一結婚したいと思えた男性が彼だった

私が人生で唯一、結婚したいと思えた男性、それが彼だった。私には、明確な結婚の条件があった。信念があった。それを他人に理解してもらえるとは思わない。あくまで、私のこだわりだ。

私は、結婚イコール「家庭を築く事」だと捉えている。だから、結婚は家族を作る始めの一歩。ただ、セックスの相手が欲しいなら、自分を大切にしてくれる人が欲しいなら、「彼氏」で十分だと思う。

それなのに、なぜ結婚するのか、それはやっぱり「子供」の存在なんだと思う。だから結婚するとしたら子供の育て方を考える。

私の家は、裕福な家庭ではなかった。もちろん、小中高と公立だったし、大学は奨学金を借り、通えた大学も私が勉強をできなかったせいで偏差値の低い大学だった。

卒業してからも借りたお金を返すために「働く」以外の選択肢はなかった。別にそれが特別なわけではないし、日本には私のような学生が少なくないこともわかっている。

結婚したいと思える彼に別れを示唆され、私は受け入れられなかった

しかし、今の日本はそんなFラン大学卒の私にとって、とても生きにくい。働いても、働いても増えない手取り、高くなる物価、社会保障の崩壊。この先、日本はもっと生きにくくなる。自分の子供の世代なんて、もはや、日本の生きる奴隷だと私は感じてしまう。

この、クソみたいな世の中に自分のエゴで子供を産むなら、これから生きていく子供に私がしてあげられることは、せめて好きなことができるくらいの稼ぎを可能にすること、教育環境のサポートだ。子供が「海外の学校に通う」という選択肢を当たり前に持っていて欲しい。

金銭面での不安要素が原因で、選択を狭めることはあってほしくない。でもだからこそ、私には頑張って稼いでくる「旦那さん」が必要だった。

彼は一生懸命働いていて、穏やかでとても愛嬌があり、そして、頼り甲斐もあった。完璧な人だった。一生懸命働きすぎて、会うどころか、連絡すらなかった。でも、長所と短所なんて紙一重だし、話し合って折り合いをつけていけば大した問題ではないと思っていた。

しかし、彼は遠回しにこのまま付き合っていても私に悪いというような事を言ってくるようになった。そんな理由、受け入れられなくて、私は話し合いたいと伝えたが、彼は話し合いどころか、連絡すらくれなくなった。

コロナが流行り始めた頃の話でもあり、このまま自然消滅するくらいならハッキリさせておこうと考え、私は青い背景が緑色の吹き出しでいっぱいになっている画面で「さよなら」と伝えた。

別れてもLINEの返事がなくても、私はまだ彼に期待していたのに

その後、彼からの返事はなかった。それどころか、既読にもならなかった。それが答えだと自分に言い聞かせながらも、やはり、すっきりしていなかった。どこか、煮えきらない部分があった。

そんな彼の近況は私からは謎に包まれていていた。だからこそ、また彼とやり直せる可能性を私は捨てきれていなかった。だから、ありもしない希望をもってしまったのかもしれない。「彼のことだ、結婚なんてしていないのだろう」と「何年後かにまた、出会い、溝を埋めて再出発できたらな」なんて気楽に考えていた。

新しく出会う男性はピンとこない人ばかりで、やはり、彼しかいないと再認識していた矢先、とんでもないものをSNSで見つけてしまった。それは、彼の妻だと思われる女性の投稿だった、その女性は半年前に結婚したようだった。

華やかではないが、整った顔つきで、育ちが良さそうな女性だった。旦那さんの顔は写っていないものの、その背丈や、状況、実家などからみて、おそらく、彼の妻なのだろう。

認めたくない気持ちもあったが、違う可能性を見つけようとすればするほど、確信を持つ証拠ばかりでてきた。彼は結婚願望がなかったのではなく、単に私と結婚する気がなかったのだと認めざるを得なかった。

私はback numberの「そのドレスちょっと待った」を聴きながら、初めてこの恋が終わっていないと思っていたのは自分だけなのだと実感した。