仕事を辞めた。店長という肩書きが、とても私に重くのしかかったからだ。

何が重いと言われるとよくわからないけれども、「責任」のたった2文字がどうしようもなく私を苦しめたのかもしれない。

言葉を飲み込んで、どんどん成長しなければならないと仕事に集中した

私はとある会社に、2020年に入社した。子どもと関わる仕事で、体力も気力も必要である。その上技術も身につけてはならなく、ひたすらトレーニングをした1日もあった。自分に力がついたと実感すると楽しく、実践して成功すると更に仕事が楽しく感じた。

それに異変が出たのは、入社して半年たった秋頃だった。仕事柄、秋口は忙しくなる。季節は日が落ちるのが早くなり、赤トンボが飛び、静かな時間が流れていく。しかし、仕事にはそんな季節の風流さなど、どうでもいいのだ。

自分が1番の新人だが、新人としてどんどん成長しなければならない。社員として、自分が求められるものは大きい。しかし、どれだけトレーニングをしても、いざ本番になるとそれが出来ないことの方が多くなってしまった。

周りからどんどん急かされる、急かしていないつもりかもしれないが私にはそう感じられてしまった。「詰め込まれることが多いですね」なんて職場で漏らせば、「社員だからしょうがない」という一言。

社員だからって何、何でも出来なきゃいけないのか、すぐに何でも出来る人にならなきゃいけないのか。そんな事を思っても、言える人なんて周りにはいなかった。言葉を飲み込んで、仕事に集中した。

だが、実際は集中出来なかった。明らかにミスが増え、怒られることが多くなった。急に涙が出たり、好きなはずの歌手の映像も見れなくなった。そして、仕事前に吐くことが多くなった。

それでも仕事は行き続けた。意地だったのかもしれない。それでまた何か言われるのが怖かったのかもしれない。

仕事で追い詰められて、私は退職を決意した。しかし、店長を任された

でも、身体は正直だった。その日は使いものにならず、早退した。その時上司に言われた言葉が、「これは身体の問題?気持ちの問題?」。

最初に思ったのは、「はあ?」の一言。何それ、え、貴方のそういう言葉が私を追い詰めてるんですけど。そんな事を言えるわけもなく、返事をせずに帰宅した。それが11月初めのことだった。

そこで退職を決めた。ただ、今辞めると中途半端で、転職も上手くいくか分からないし、とりあえず3月まで続けて1年はやった実績がほしいと思った。ただ、辞めるとなると吹っ切れたのか仕事はある程度順調だった。

そして大きく状況が動いたのが、1月中旬。上司から突然電話がきて、辞令を伝えられた。店舗の店長になるとのことだった。動揺が大きく、そのまま受けますの返事をしてしまった。

我に返ったのは、電話を切ってからだった。まず思ったのは、この実力で店長になったら、また色々言われる。中でも、パートの1人は私に当たりが強く言ってくる。辞めようと思ったのも、この人が8割ぐらい原因だ。とりあえずこの人を黙らせるぐらいには仕事が出来るようになろうと思った。

そこからは、ひたすら必死だった。出来るように、こなせるように、がんばって、がんばって、いきなりそのがんばっていた糸がプツンと切れた。倒れたわけでもない、病院に行って病名を診断されたわけでもない。ただ、漠然と「ああもう無理だ」と実感した。

店長になり、責任だけを押し付けられるようになった。もう無理だった

毎日の不安、そして何か問題があった時にだけ、「店長が対応お願いします」「店長判断してください」「店長、店長、店長」。そう呼ばれるのがすごく嫌だった。同時に、そういう自分に都合が悪い時だけ責任を押し付けてくることに腹が立った。腸が煮えくり返るような怒りとはこのことかと思った。

これからもそう呼ばれる。それは無理だと思った。いやだいやだと、ただ押し寄せる不安に涙した。なんで、私がやらなきゃいけない? 社歴は他の人の方が上なのに。店長だから? 別に望んでなったわけではない。こんな思いをこれからずっと背負う。それは持たないなと思った。

無理と思った4月。そして、上司に告げた6月。退職が決まった8月。決まってしまえば、気持ちはあっさりしていた。行動力だけは昔からある方なので、辞める理由は、会社には正しく伝えていない。

「嫌だから辞める」では、「もうちょっと頑張ってみたら?」なんて引き止められるのは嫌で、親の家業を継ぐことにしたと伝えた。会社の人には誰1人として、本当の理由を言わず、友人には真実を話した。職場の仲のいい人には伝えようか迷ったが、他の人に漏れると嫌なので伝えていない。所詮は他人だったんだなと感じた。

私はこれを書いてる2週間後に、仕事を辞める。何が正解かなんては分からないし、知ろうとも思わない。私は、私を大切にしたい。守りたい。

私は私を好きでいたい。だから仕事を辞めました。仕事を辞める理由は、そんなもんでいいんだと思います。