あまりの寒さでしゅんとしぼんでしまいそうな冬のある日、私は彼氏と別れた。彼氏のことはまるで自分の一部のように感じていたため、身体が残酷に引き裂かれたように感じた。

よく「失恋の傷は男で埋めろ」というが、謎のプライドがある私はその手段は選ばなかった。新しく彼氏が出来たとしても、その彼と同じように別れたら、また次の人を探して、そのループにはまってしまいそうだし、それにのめり込む自分が怖かった。

元彼と復縁したくて、心の痛みをごまかすかのように「自分磨き」をした

何より自分が受けた傷は、自分で治したかった。そのため流血する心の痛みをごまかすかのように私は自分磨きをした。ダイエットに励んだり、今まで挑戦してこなかったオレンジメイクをしてみたり、猫背気味だった姿勢を意識的に伸ばすようにしてみた。

少しでも自分がキラキラしている思えることをすることが、失くした自尊心を回復させる唯一の方法だった。そうすることで、「元彼と付き合っていた頃よりも可愛くなった」と、まるで魔法にかけられたかのような新しい自分と出会えた気持ちになれたし、「元彼を見返してやるんだ」という自分磨きをさらに頑張る強い決意を固められた。

その気持ちの裏には「復縁したい」という藁にもすがるような願望があることは、自分でも痛いほど分かっていた。YouTubeやSNSで、復縁したいなら別れてからこの位は空けておいた方が良い、といわれていた半年が経った。

その間にも元彼とは友達として遊んでいて、パスタ屋さんやディズニーに出掛けていたため、きっと私が徐々に変わっていっていることに気付いてくれていると信じたい。

元彼と別れて半年、私は「復縁したい」とメッセージを送った

この半年が経ったタイミングで、私はLINEで復縁したいとメッセージを送った。別れた原因であった、私が彼に甘えすぎてしまう問題に対しても、お互いのために程よい距離感で付き合っていきたいという意思を伝えた。

結果はなんとなく分かっていたけど、復縁は叶わずで、指先から全身の力が抜けて崩れ落ちるかのようなショックを感じた。それだけなら良かったのだが、LINEをブロックまでされてしまった。更には、携帯の番号も着信拒否設定されてしまったため、連絡手段はすべてシャットアウトされてしまった。本当に何もかも終わってしまった。

二度目の失恋のショックと、なぜここまで拒否されなきゃいけないのかという怒り、「友達でいよう」と言われたのに、それを裏切られた絶望感の合間から、「これからどう生きていけばいいの?」「どうすれば幸せになれるの?」「人生って何?」などの様々な疑問が湧いてきた。

自分一人で生きていく自信もなくなり、生きる意味さえ見失い、自分で自分自身のことを、外見は人間の形をしている中身が空洞の、トイレットペーパーの芯みたいに虚無な存在だと思うようになってしまった。

二度目の失恋で、一人で生きていく自信も生きる意味も見失った

それから平日は無理やり会社に行くものの、休日は家でじっとソファーから動かず過ごしていた。しかし、それでは自分が石像化してしまいそうだと危機感を感じ、早朝から川沿いを二時間ほど散歩することにした。そして疲労でピクピクする足でカフェに立ち寄り、コーヒーを頼んで読書をした。

そんな生活を続けていたある日、ふとそんな日々が「楽しいな」と思えていることに気が付いた。自分で自分を大事にできていると思えた。それは久しぶりの感情だった。

「元彼と復縁したい」「元彼に可愛いと思われたい」「元彼に好かれたい」と、それまでの私の頭の中は元彼でいっぱいだった。彼がいつの間にか私の心を蝕んでいたのだ。

自分磨きも確かに大事だが、それ以上に自分が楽しいと思えることをすることや、自分自身を認めることが何よりも重要なのだと実感した。今、私は私自身や生活のことを「これで良いんだ」と思えている。

体重は考えたくないほど重いし、それなのにダイエットはなんだか停滞ぎみだし、目も一重だし、彼氏は相変わらずいないし、コミュ障で友達は少ないし、仕事は出来ないし、通勤時間往復三時間かかるし、口内炎は頻繁にできる。甘えでも妥協でも自惚れでもなく、満足している。

きっとこれからも満員電車でなんとか倒れないように吊革に捕まるみたいに、ギリギリで生きていくのだろう。KAT-TUNじゃないけど。