「ごめん、好きな人ができました」
突如彼から来たLINE。
現実が受け入れられなくて、一瞬目眩がした。
付き合って約半年。あと1週間で半年だった。10日前にはGWに2人でキャンプに行ったのに。
何で、何で、どうして。
冷めてきていたのは分かっていた。
私が努力しないと、と思って我慢していたことも増えつつあった。
彼から急にドタキャンがあっても仕方ない、遊びにも家にも誘ってくれなくても仕方ない、バレンタインデーのお返しがなくても仕方ない……。
バカな自分に気づいた時にはもう既に遅かった。
今から3カ月前の出来事。

ナンパで出会い、最初は信頼できなかったけど、そばにいたいと思った

涙が次から次へと流れた。
どこで自分が失敗したのか、何がいけなかったのか。
生きる気力をなくした。
必死に頑張ってやってきた仕事も副業も、何のためにそもそも頑張ってきたのか分からなくなった。
自分の心はここまで人との繋がり、大好きな人の存在に支えられてきたことを初めて知った。
生きる意味がないんじゃないか、本気でそう思った。

出会いは恵比寿でのナンパ。
ナンパから付き合うなんて、と思っていたし、そもそも田舎出身の私にとって東京の人は選択肢が多すぎて、一人の人を本気で愛することなんてないんだろうと心の奥底で偏見を持っていた。
だから彼のことも最初は全く信頼できなかった。
ただ、試しにご飯に行ってみた時に同じく田舎出身で、将来の夢のために必死に頑張る彼を見て、応援したくなった。
ずっとこの人のそばにいたいと思った。

社会人3年目の私。
人のことを本気で、好きにはなれないかもって思っていた私にとって、彼は心の底から好きになれた人だった。
大好きだった。
将来の話もいろいろした。
お互い夢を叶えて、彼が大好きな子供も持ちたいねって話もした。

心底好きになったのに、人生に迷っている本当の私を見せられなかった

ただ、私は彼に秘密にしていたことがあった。
もうやめたけど、マルチ商法に似たもの。
彼と付き合い始めた時には辞めようかなと思い始めていて、ただ、彼には言えなかった。相談さえできなかった。
自分の軸がある彼に、自分の軸がなくて人生に迷っている私の本当の姿を見せたくなかった。
失望されたくなかった。
最後まで打ち明けられずに、本当のことを話せない私に、彼の心がだんだん離れていったことには、多分もっと早く気づけた。

今なら分かる。
彼がずっと言っていた、「一人の人を愛したい」。
今まで沢山遊んできて、もうちゃんと恋がしたい、心通わせられる相手が欲しい、と振られた時にも付き合った時と同じ言葉を述べた彼に、最後まで信頼してすべて打ち明けられなかった私の責任。

何を言っても伝えても、彼に私への未練が全くないことが一番辛い

後悔してももう遅い。
お別れLINEの一週間後の、直接会って話した時に、彼に本当のことを話せなかった理由を言った。
年末にちゃんと会えなかった理由、全然休日に遊べなかった理由、なぜここまで時間を作られなかったか、の理由。
彼は黙って聞いていた。
そしてポツンと、「もっと早く言ってほしかった」と呟いた。
私は聞いた。
「でももう、その好きになった子を選ぶって決めたんだよね……」
「……うん、そうだね」

それから彼は、好きになった人が同じ業界で営業として頑張る人で、会食で出会った、と言った。
私の目には、可愛くてコミュ力もある営業の女性がありありと目に浮かび、そして聞いた。
「私、待っててもいい?何年後になってもいい。あなたぐらい好きになれた人、今までいないの。本当に」
彼は言った。
「それについては俺からは何も言えないけど……、そこまで思ってもらえる人じゃない」
そんなことない、と私は伝えた。
彼は何も言わなかった。
そして別れ際、彼は握手を求めてきた。
「今まで本当にありがとう。お互い夢を叶えるために頑張ろうね」と。
握手はしたけど、そんなキレイな言葉で、さっぱりした顔で、まっすぐに私を見る彼の目から、もう私には未練が全くないということが分かって私には一番辛かった。

信頼関係を築くことが私の恋愛には大切だと、彼との恋で気づけた

それからの1カ月はネット記事や動画で『復縁』ワードを必死に検索した。
冷却期間が大切とか、別れ方によるとか、知識だけが無駄に増えていった。
ここまで泣けるんだ、と思えるくらい、振られて2カ月間は涙がふとした時に、次から次へと流れた。
忘れようと、色んな男の人と遊んだけど、心の中は無気力でいつも空っぽだった。
振られてから3カ月たった今は、彼へのそんな気持ちは執着だった、と心の底から思えるようになった。
自分が自分らしくいれる人。
何でも恐れず打ち明けられる人。
そんな人と、信頼関係を築くこと。
それが私の恋愛には大切なんだって、分かった。
彼と付き合えて良かったし、沢山学ばせてくれたから、今は感謝しかない。
何より、自分には、まだ人をここまで好きになれる才能があるって気づけた。

実は、終わらない恋ではある。
この恋は、私の中でずっと生き続けるから。
20代前半、人生を彩ってくれた彼に、24歳の私は本気で恋をした。
この思い出は、終わらない。
いつまでも色あせない。