私は今年で社会人になって3年目になります。地元から離れて7年目になりました。
今から10年前、私は心のふるさとになる「ある場所」に出会います。それは、私の地元にある図書館のベンチです。
そこは小高い丘の上にあり、遠くに水平線が見える、太陽の光に照らされた場所です。
なぜ、この場所が私の心のふるさとになったのかというと、その場所で3度、私は人生の分岐点を決めた場所だからです。

進路を決められず取り残されていく私は、図書館のベンチに座った

高校卒業を控えた10年前、大学進学という大きな壁にぶつかります。これは誰もが出会う壁だと思います。
この時期の私は自分が何ができて、何をしたいのか分かっていませんでした。大学に入ってからでもやりたいことを見つければいいのではないか、という意見も頂きました。今、将来を決めなくてもいいのではないかと。ただ、私にはその時間がもったいなく感じました。大学に入ってからではなく、大学に入る時には自分のやりたいことをしっかりと自分の軸にしておきたいと考えていたからです。
ただ、周りの人が大学進学を決めていく中、私は取り残されていきます。この時にあの図書館のベンチに初めて私は座りました。それから学校帰りはほぼ毎日立ち寄るようになりました。
ある日の夕方、大学進学をしないことをあの図書館のベンチで決意します。周りと歩幅を合わせてきた私が初めて決めた人生の始まりです。
それから2年間、居酒屋、結婚式場、飲食店と3つのアルバイトを掛け持ちし、色んな人と話すことを心がけていました。1日の終わりは図書館のベンチに座って、ただただ水平線を眺めていました。何も考えずにぼーっと座っているだけで心は軽くなりました。

人生の分岐点を迎える時、決断はいつもあの図書館のベンチで

高校卒業から2年後、私は2度目の人生の分岐点を迎えます。大学進学をしないと決めた2年前、それと同時にいつか大学進学をすると決めていました。
アルバイト後に夜勤終わりの姉と2人で図書館のベンチに座り、唐揚げを食べながら他愛のないおしゃべりをしていました。その中でこれからのことについて話し、初めて地元を離れる決意をしました。
新しく始まった大学生活は、9割以上が年下の子で、はじめは不安しかありませんでした。しかし、それと同じくらい希望もありました。学びたいことを学んでいる時間、友人と楽しく遊んでいる時間、アルバイト、全てが楽しかったと今でも思います。そして、大学卒業。

3度目の分岐点は就職です。進みたい道は決まっていました。就職の報告に地元に戻った時に図書館のベンチに行きました。今回は3時間ほどベンチに座り、周りを見渡し決意を固めました。
新しく就職先として決めた場所は、地元にはすぐに帰れない距離にあります。大学までは地元ではないけれど家族や友達が近くにいました。正直、私はずっと地元の近くにいるのだろうと思っていました。この新しい場所で私はどのくらいできるのだろうという不安があったのを覚えています。

2年近くあのベンチに行けてないけど、何かある度に思い出す

今いる場所は、人とビルが溢れてきらきらしている場所で、地元にはない新鮮さがあります。しかし、逆にこれまでずっと見ていた親しみのある風景はなくなってしまいました。
泣きながら帰路に着くこともありました。そして今の生活に少し慣れてきた2年目にコロナが発生しました。地元にも帰れず、近くに家族も友達もいない中で、これからどうなるのだろうという恐怖がありました。
あの図書館のベンチには2年近く行けていません。何かある度にあのベンチを思い出しています。今の状況が落ち着いたらあのベンチに座り、ぼーっと時間を過ごしたい、それがいまの私の願いです。
そして、最後に来年から新しい人生が始まります。6年前に出会った最高のパートナーとともにこれからの人生を歩んでいくことになりました。いつか、一緒にあの図書館のベンチに肩を並べて座ろうと思います。