大学生の頃、夏は色んなことをしていた。生温い風の中でお酒を飲んだり、バスに揺られながら合宿へ行き、川遊びをしたり、夜にはBBQ、そして花火。とにかく夏と表されるもの全てをやっていたと思う。

パートナーの誕生日はセミが鳴き始める時期だったので、小旅行を計画

なんだか、去年のほうが夏らしいことをできていたかもしれない。私は去年の4月~9月まで半ニート生活だったので、割と自由な時間があった。

それが今年はちゃんと毎日働いていたので、夏らしいことができるのは休日のみ。週2の休みで何ができるだろうか。

それでも何とか夏らしく過ごせる日を作りたかった。パートナーの誕生日はセミが鳴き始める時期だったので、ここぞとばかりに計画を練ったのだ。

緊急事態宣言前、足を伸ばして鎌倉へ1泊2日の小旅行計画。海まで徒歩5分の宿は、1ヶ月前に予約を取った。予約時のコメントに「パートナーの誕生日で予約しました」と書いてしまうくらいには楽しみだった。

ホテルの部屋には、パートナーの誕生日を祝うサプライズが施されていた

そんなこんなで当日。チェックインをして部屋へ入ると、ベッドの上にはタオルで作られた白鳥2羽がハートマークを作り出し、周りには「happy birthday」の文字と花びら。

そう、宿へ予約したときに誕生日の飾り付けもお願いしていたのだ。だいたいは男性から女性へするものなのだろうが、サプライズに男女は関係なし。パートナーはたくさん写真撮って、喜んでいた。

そして、夕飯は宿にある食事処で済ました。美味しいご飯を食べた後、ここでもサプライズ。スタッフの方が持ってきたのは、パチパチと光る花火とガトーショコラ、その周りには飴で作られた貝殻たち。

近くにいるのは静かに作業している方ばかりの中、「お誕生日おめでとうございます!」という言葉、ツーショット撮ってもらう私たち、静かに消えゆく花火。「思いもよらぬところで花火を楽しめたね」と言いながら飴を食べたが、なかなか溶けず先に食べるものではなかったと後悔する夕暮れ。

今年は1泊2日の小旅行だけが夏の思い出かもしれないけど、それでいい

次の日は、昼から由比ヶ浜まで行った。海岸へ近づくにつれ、増えていくのは水着の男女。そんな中、向かっていくのは全身黒のカップル。泳ぐ気など全くないのが丸わかりな格好である。

そんな中でも私たちは海岸へ行って、波に攫われぬように手を繋ぎながら歩いた。「これサクラガイだよ」と言われ、小さなピンク色の貝を貰った。

私は北国育ちなので、初めて見た貝だった。薄くて、波の中ですぐに消えてしまいそうな、桜の花びらのような貝。どうやら、パートナーは見つけるのが得意なようで、次々と場所を示した。それを私が取って、綺麗な貝をたくさん拾った。

そうやって海岸を歩いているうちに、遠い場所まで来てしまった。「戻ろっか」と右手はパートナーと、左手には集めた貝殻を大事に守りながら、私たちは帰路についた。

今年は、この1泊2日の小旅行だけが夏の思い出かもしれない。でも、それでいいと思ってる。

きっと来年はまた新しい夏の思い出が作れるから。再来年なら、もっと遠い場所も二人で行けるかもしれない。そうやって夢を描いて、今を生きていくしかないのだ。