私の憧れは宝塚歌劇団の生徒さん、通称・タカラジェンヌだ。小学5年生のときに宝塚歌劇にハマってから、ずっと変わっていない。
舞台に懸けるストイックな姿勢や、華やかな舞台に負けない美しさ。その一方で、オフでは可愛らしい素顔を覗かせるギャップ。すべてが憧れだった。

宝塚に入りたいという思いを胸に、小学5年生からクラシックバレエを

幼い私は「宝塚に入りたい!」という強い想いを抱き、小学5年生からクラシックバレエを習い始めた。

小学5年生からバレエを習い始めるのは、かなり遅いスタートだった。同い年の子たちは、幼稚園の頃から習い始めている子がほとんど。すでに大きなブランクが生まれていた。
だが、私はめげなかった。なぜなら、あのタカラジェンヌの中にも小学5年生からバレエを習い始めて、あの舞台に立っている人がいるからだ。だから、私も努力をすれば大丈夫!という確固たる自信を持ってレッスンに励んでいた。
バレエスタジオは全面鏡張りで、踊りの欠点や身体のラインなどが丸わかりである。ビデオや劇場で見たタカラジェンヌと自身の差が明白だった。
悔しかったが、それでも宝塚に入りたいという気持ちは消えることがなかった。「レッスンを受けているから、私も頑張っていたら上手くなれるし、宝塚に入れる」とぼんやり思っていた。

同じ志を持つファンとの交流で気づく、宝塚受験に対する認識の甘さ

高校生になった私は、携帯電話を持たせてもらえるようになった。ずっと前から気になっていたSNS・アメーバブログを始めた。
ブログを書くことは楽しく、好きな宝塚作品の感想などを自由に書いていた。多くの宝塚ファンから感想を貰い、交流することができた。そのうちの何人かは、私と同じように「タカラジェンヌになりたい」という志を持ったファンもいた。
彼女たちと交流するうちに、私の宝塚受験に対する認識の甘さを知ることとなった。全国の宝塚受験生は、宝塚受験のための受験スクールに通い、バレエのみならず声楽・面接の厳しい練習を積み重ねている。また、食事制限やレッスン場で体重を記録など、体型維持にも余念がなかった。

衝撃的だった。バレエのレッスンを受けているだけで、タカラジェンヌになれると思っていた自分が恥ずかしくてたまらなかった。
それと同時に「本気で宝塚に入りたいのか」という疑問が私の中で生まれた。バレエを何年続けても、踊ることが心の底から好きだとは思えなかった。レッスン場で人前で踊ったり演技したりすることは恥ずかしい。カラオケですら人前で歌うのは苦手。そんな私が本当にタカラジェンヌになりたいのか?と。

進路ガイダンスで気づいた、私が本当に好きなこと、進みたい道

そんなとき、学校で進路指導のガイダンスが開かれた。大学についての説明だった。それを聞いているうちに「文学部って面白そうだな」とゾクゾクにも似たワクワクを味わった。元々本を読むことや文章を書くことが好きだった。現代文の授業も大好きで、模試などでも偏差値は60を下ることはなかった。そしてその時に「私の進みたい道は大学進学だ」と気付いた。
踊ることも歌うことも好きじゃない。私が好きなのは、歌って踊る舞台を見ることだ。宝塚は好きだけど、宝塚を見ることが好きなのだ。
高校卒業後は宝塚音楽学校には入学せず、地元の大学に進学し日本文学を専攻した。現在はOLの傍ら、恋愛コンサルタントとしても活動中だ。幼い頃に描いていた進路とは違った道を歩んでいるが、1mmたりとも後悔はしていない。

幼い頃、憧れだったタカラジェンヌは皆お姉さんだった。私が受験しようとしていた100期生もいまや看板スターとなり、かつてのお姉さんのように輝いている。彼女たちはやはりかっこいいと思う、憧れの存在だ。それと同時に、同世代として「私も頑張ろう」とパワーをくれる同志のような存在でもある。
すみれの園・宝塚歌劇には入れなかったが、私には私の人生のステージがある。そこで存分に輝こうと決めている。