私は過去に約半年間、マッチングアプリを利用していたことがある。
4年交際した彼氏と別れた直後で、誰に会っても比較しては「この人じゃ彼を超えられない」とばかり決めつけてしまう自分に嫌気がさし、ならば母数を増やしてしまえと3つのマッチングアプリに登録した。

会ったこともない男性に即座にライン交換を求められるマッチングアプリ

世はちょうどマッチングアプリブーム。
お昼の番組だけでなく、朝晩に流れる真面目そうなニュース番組ですら取り上げられる程話題になっている時分だった為か、ほぼ毎日のように連絡がきた。

元々マメに連絡をとりたい性分だったこともあり、頻繁な連絡は私の心を躍らせた。
しかしその相手ひとりひとりと直接会って話すようになり、この恋愛ならではの難しさを理解していった。

登録したアプリの内2つは男性会員がお金を払い登録するもので、連絡を多く取り合う為にも支払いが発生する為、多くの人はある程度連絡を取り合うとすぐ、ライン交換を求めた。

しかし、アプリ登録には個人情報の登録と証明が求められるものの、会った事もない赤の他人にラインを教える事はなかなかにハードルが高い。
とは言え二の足を踏むと、まずそこで脱落してしまう危険性も高い為、思い切って会ってしまうか別の連絡手段を用意するしかない。

仕方なく公式ラインという、通話や画像送信の出来ない別アプリで対応するが、これはこれで不審がられてしまい、四割程度の男性とは疎遠になってしまった。

初対面では互いの探り合いが始まり、想像以上に体力と気力を消耗した

連絡手段への理解を得て、いくらかの連絡を取り合い互いへの理解を深め、いざ会うとなってもまた難しい。

連絡を取り合っていたとはいえ、直接会うのは初めましてになる。接客のアルバイトが長く比較的会話が得意な方だと思っていた自分ですら、会話を弾ませてスムーズはデートにするには苦労した。

どうしても、初めましてから自己紹介の様な会話を経て、少しずつ互いに探り合いを始めてしまう。これが毎週のように起きてしまうと、想像以上に体力・気力を消耗した。
まるでベルトコンベヤーに乗った男性達をさばいていくような心地になっていった。出会いが、恋が、ゲームですらない流れ作業になっていく過程に息苦しいとすら感じていった。

それでも初回から気の合う人は数人いた。デートも回数を重ね、いよいよ交際を考えてもよさそうな状況になった時、またマッチングアプリならではの難しさを知ってしまう。
私たちには共通の知り合いはいない。仕事や趣味を知っていても、それが本当なのか判断する材料を得られない事も多い。

突然連絡を絶たれそうになったら繋ぎ止めたり、勧誘目的のようだったら真偽を確認したり、相手を信じる為のもう一歩がなかなか難しいのだ。

嫌なことがあればアカウントをブロックするだけ。切り捨てるのも早い

これは逆にも言えるようで、マッチングアプリで出会っただけの関係性だと切り捨てる時のハードルはかなり低いらしい。
連絡を止め、アカウントをブロックするだけ。はじまりもおわりも、全て片手でできてしまう恋。

こうして私は新時代の波に乗り切れずに終わった。
次に恋をしたのは1年後、職場で出会うというなんの捻りもない始まりだったが、初めて交わした言葉、連絡先を交換するまでの駆け引きに、今まで以上にワクワクした気がする。
タイプでない彼と交際まで長くかからなかった大きな理由の一つは、相手の素性が分かっている事への安心感だった。