高校二年の冬、新型コロナウィルスが私たちの日常を一変させた。数ヶ月間の休校を経て登校すると、私が片思いをしていた先輩はいなくなっていて、彼が一年間過ごした教室に私がいた。

高校に入学して最初に仲良くなった男の子は、何でも話せる友達だった

会って会話は出来ても、通話やSNSでは文字にすることが恥ずかしくて連絡出来なかった。所詮、部活の先輩後輩。何も出来なかった私は片想いしていたことすらおこがましくて、友達にも気持ちを隠した。

よく恋愛診断などで、この設問を目にしたことはないだろうか。「恋人と連絡は毎日とりたい? Yes or No」。

コロナ禍を体験したカップルなら、間違いなくYesと答えるだろう。私の住んでいた県は、新型コロナウィルスの爆発的な影響は受けていなかった。そのため六月以降は以前とあまり変わらない学校生活を送ることが出来た。

授業の一環でプロジェクト発表があり、それをきっかけにクラスの男の子とよく連絡をとるようになった。週に一回は、必ず寝落ちをするまで通話をした。高校に入学して一番最初に仲良くなった男の子だった。専門科のクラスだったため、三年間クラス替えはない。

彼は私の親友が好きだった。正確にいえば、両片思いの関係だった。彼とは最初に仲良くなったが、クラスで毎日会話を交わす仲ではなかった。いつの間にか私の親友と親しくなっているし、彼に対する嫉妬心すらあった。

親友のことを好きだと思っていた彼に「告白しないの?」と聞いたら

私に話しかけてくる時は、いつも親友の居場所を聞いてくる。さっさと付き合ってくれれば良いのに。いつもそう思っていた。「なんで告白しないの?」と私が聞くと、彼は「だから好きじゃないって」と言っていた。

嘘だ。きっと振られてしまうことを恐れている。私が「大丈夫だよ。両思いだから」と言うと、彼は「好きな人はいるけど違うから」と言った。私に話しかける時毎度親友の名前を出すのに、違うなんて白々しい。この二人の恋愛に板挟みにされることに嫌気がさしていた。

彼は「俺の話はいいからさ、ねぇ。好きな人とかいないの?」と話を逸らした。「私? 私は今はいいかな。あと三ヶ月で卒業だし、上京するから遠距離だよ? 私は会えないと無理かな」と私は答えた。私にとって相手の表情、直接の会話ができることは何よりも大切だった。彼は「そっか」と微妙な反応だった。あまり共感は得られない持論だったようだ。

高校三年生のクリスマスは特別なものだったらしいと、後になって気づいた。彼氏がいた時は彼氏と、それ以外は友達と必ず一緒に過ごしていたが、高校三年生のクリスマスは皆忙しそうだったため、私はバイトを入れて朝から晩まで働くつもりだった。

彼が「クリスマス何して過ごすの?」と聞いてきたので、私が「え、…まだ決まってないかな」とだけ言った。アルバイトをしていることを周りには隠していたため言わなかった。

すると、「クリスマス……二人で出かけない?」と言われ、私は「え、無理」と即答だった。もうバイトのシフトは決まっているし、冗談だと思ってしまったからだ。「ほらっコロナだしさ! 今年は家でゆっくりするかな」と言い、彼は「そうだね」とだけ言った。

私は「素直」に会話が出来る人に出会っていたのに、自分を守っていた

クリスマス明けのクラスでは、三組もカップルが誕生していた。卒業前の最後のイベントで勇気を出して告白をした人が多かったみたいだ。離れてしまうという意識が高かったのだろう。

私が彼に「告白したの?」と聞くと、彼は「俺、好きな人に告白するつもりないよ」と言った。思わず「なんで?」と聞き返したら、彼は「好きな人がそう言ってた」と答えた。この時は、彼の気持ちに何も気づかなかった。彼が気持ちを伝える前に、私が彼の口にマスクをさせ、その機会を奪った。

そして、自分の気持ちにも鈍感になっていた。既にもう通話でもSNS上でも素直に会話が出来る人に出会っていたのに、自分を傷つけないようにしていた。これは感染予防だ。新型コロナウィルスは、私の恋心を慎重にさせた。

もし新型コロナウィルスが終息しマスクを外し同窓会が開かれた時、思い出話として話せるだろうか。良い男になってないといいな、ふとそう願った私は彼のことが好きだったみたいだ。