憧れたアニメの女性キャラクターは悪女にも思えたけど、理解できた
私はあるアニメの女性に憧れた。
キレイな長い黒髪でハーフアップ、膝丈のスカートに小さなカバン、高すぎないパンプス。はじめは、清楚で優しそうなお姉さんといった外見で登場したその女性に、私は自分の理想と近いと思うだけだった。
しかし、アニメが進むにつれてその女性は豹変する。その女性は、誰かから愛されている男性を自分のものにすることが快感で、奥さんや恋人のいる男性にわざと近づいた。そして、その男性から奥さんや恋人と別れたと聞くと捨てる。誰かから愛されているものだけがよく思えるから、誰かから愛されていないものには興味がなかった。
もちろんひどい悪女にも思えた。しかし、私は虜になった。なぜなら、私はその女性の考えが理解できたからだった。
釘付けになったアニメ。虜になった女性キャラのセリフは印象的だった
私は、美人というわけではなかったが顔はそこそこで、接客業をしていたので愛想はよく男性から第一印象に好感を持たれることは多かった。なので、告白されることも多かったが、付き合ってもなぜか相手のことが好きだと思えたことは一度もなかった。どうやって人を好きになるのか、それが全く分からなかった。
そんな時、見たアニメに私は釘付けになった。特に印象に残っているのが「個性なんて嫌い、誰も求めていないもの」という一言だった。
美大に通っていた私は、作品を作るとき常に教授から個性を追求するように言われていた。
しかし、個性とは何なのか?わざと他の人と違うことをすることを個性というのか?私は無理に作り出そうとする個性に違和感を感じていた。
だからこそ、その女性のセリフがすごく好きになって、憧れるようにもなっていった。髪を伸ばしハーフアップに、膝丈のスカートで小さなカバン、高すぎないパンプスを真似した。
さすがに、奥さんがいる人は狙わなかったが、誰かがいいと言ったものがよく見えるようになり、好きになる相手は誰かが好きだと言った相手になった。もちろん、そんな相手と付き合ったところで長くは続かなかった。
結婚して思い出したあのアニメ。最終回の結末に嬉しくなった
それから3年ほど経って、私にも初めて好きだと思える相手ができた。見た目がカッコイイわけでもなく、要領がいいわけでもない。どこが良かったのか未だに答えられないが、今までの相手にあった違和感が全くない人だった。あんなにも人を好きになれないと言っていた私が、こんなあっさり誰かを好きだと思えるなんて自分でも不思議だった。
それから2年、私はその人と結婚した。
結婚の報告をするとお決まりのように聞かれる「どこがよかったの?」に、あのアニメを思い出した。アニメは漫画の途中までしか放送されなかったため、最終回を私は見ていなかった。何だかとても気になった私は漫画喫茶へ行った。
最終回、その女性は結婚をしていた。相手はなんとも言えないパッとしない人。でも、とにかく自分を愛してくれる人。あれほど多くの男性を振り回していたのに、たった1人の男性から無性に愛されることに戸惑い、振り回されている様子が描かれていた。
それを読んで、私は嬉しくなった。何だか自分と重なって。