25歳の誕生日、もし、彼がいなかったらお見合いしよう。
24歳のとき、東京タラレバ娘のドラマを見てそう決めた。
30歳を過ぎて女友達と過去の男のタラレバ話をする女性。紛れもなく未来の私だ、と思ったから。

男ウケすること間違いなし、な一着でお見合い写真を撮り、男性と会う

母に話すと一も二もなく賛成して、25歳になってすぐ、私はお見合い用の写真を撮影した。気合の入ったその写真は、一見誰だかわからないほど綺麗だった。
写真屋さんとメイクさんと美容師さんに全てをお願いして、植物園で撮った。写真だけで50000円くらいかかった、ガチなやつである。職場の同期に見せても「誰?」って言われたっけ。
その時着ていたワンピースは、おへそのあたりからふわっと広がる、ピンクとグレーのワンピース。裾の方には大きめのお花がついていて、とっても可愛い。男ウケすること間違いなし、な一着だ。
実際、そのワンピースで何人かの男性とお見合いした。
でも、なかなかうまくいかない。
私を好きになってくれる人なら誰でもいい。そう思っていたから、好きになれそうな人となら誰とでも会った。ただ、どうしたら好きになってもらえるかさっぱりわからない。
どうしてうまくいかないのかも、さっぱりわからない。
なんだか面倒になってきて、勝手に基準を3つ作った。
本が好きであること、お箸の持ち方が綺麗なこと、運転が上手いこと。
この3つだけを見る。これは私と共通してたらいいな、というポイント。ここを見るために話をする。そうすれば、変な間が空いたって大丈夫。違ったなって思ったらすぐにやめていいよ、そんな言い訳を自分に作りたかったのかもしれない。

食指を伸ばして街コンへ。カジュアルな青いワンピースで繰り出した

改めてお見合いしてみると、3つともあてはまる人は意外と少ない。なぁんだ。意外といないんじゃん。
私は食指を伸ばしてみようと街コンに繰り出した。
カジュアルな青いワンピース。青と白のストライプのベルトがついている。わりと着やすいワンピースで、くたっとしてアイロンもかかってない。でも、それにパリッとした白いボレロを羽織ったら、ちょっとおしゃれに見えるのよね。
いつものお見合いと違って、街コンだし、そんないい男いないでしょ!そう思っていた私はクタッとしたワンピースでグビグビ飲みベラベラ喋った。おしゃれで可愛いワンピースと違って、たくさん食べてもお腹がキツくならないし。
「それで、私は本が好きで、お箸の持ち方が綺麗で、車の運転が上手い人がいいなって思ってるの」
そんなことまで喋っていた。

3つの基準を確認しようとしているうちに、トントントーンと結婚式

聞いていた男は真面目な顔でうんうんと頷いてくれる。調子に乗って次のデートの約束までしてしまった。
運転が上手いかどうか、ちゃんと確認しなきゃ。
そう思って何度もドライブデートを重ねるうちに、トントントーンと話が進んで結婚式まで挙げていた。
結婚する頃には、本は好きだけどライトノベルしか読まないことも、お箸の使い方が微妙に違ってることも、バックで駐車するのは苦手なこともわかってたけど、断る理由にはならなかった。優しくて思いやりがあったので。
もうすぐ2児の母だけど、わりと幸せに暮らしている。なるようになるもんである。
かわいいワンピースも好きだったけど、今となってはあのアイロンもかかっていない、カジュアルな青いワンピースが、私の思い出の一着。