そこまで規模感の小さいミニシネマでもない、ましてやシネコンでもない「テアトル新宿」が好きだ。
住んでいるところから新宿は通うのには、それなりに時間もお金もかかるが、それでもここで観たいと思う。
わたしの行動圏内の映画館は軒並み制覇したつもりだが、わたしは圧倒的テアトル新宿信者である。
普段関わることがなさそうな人が同じ目的を持っている映画館の魅力
新宿三丁目駅B3出口(新宿伊勢丹直結のエスカレーター)から外に出て、左手に直進。
移動時間を見誤ることが多く、いそいそと人混みをかき分け早歩きでいくことがほとんどだが、駅からテアトル新宿までは左の壁に沿って進むだけなので、頑張れば体感1分くらいで到着する。
はー、そうそう、この作品!
入口にディスプレイされている上映作品の雑誌掲載やポスターを、自分の記録のためにパシャパシャ。若干のタイムロスをするが、いやチケットは大体ネットで買ってあるから大丈夫!(こう思っているときは大概、発券することを忘れているとき。場合によっては発券機が激混みしているので、ご入場の際はくれぐれも時間に余裕を持って行動してください)
そんなわたしを横目に、父親と同じくらいの年齢のおじさんとか、カフェラテ色のリンクコーデをした学生らしきカップルとか、いつもの生活では絶対にかかわることがなさそうな人が、同じようにそそくさと中に入っていく。
最近は同じ映画を目的として、同じ映画館に足を運んでいる人がいるという事実だけでご飯3杯はいけるくらい、愛しく思える。
こんなご時世じゃなければ、と思う反面、こんなご時世でも、前のめりに映画館での鑑賞を待ち望んでいる同士がいるということを認識できたという点においては、前向きにとらえたい。
この劇場に通う理由は、空気をぴしゃんとさせるクーラーの匂いにある
せかせかとQRコードを発券機にかざして、チケットとTCGメンバーズカードを劇場スタッフさんに見せたら入場。
ふかふかの椅子にゆっくり腰掛ける。柔らかくて優しくて、俗に言う「実家のような」温かみがある。何より、対照的に無機質でその場の空気をぴしゃんとさせるクーラーの冷たいにおいが堪らない。夏場は特に。
あーそう、わたしはこのにおいを求めて、いつもこの劇場に通っているのだ。
どうやら映画館は興行場法という法律に基づいて、定期的に空気の入れ替えをすることが義務付けられているらしい、どおりで空気がいいわけだ(あんまりわかってない顔)。
ただ、その事実は映画館に足を運ぶ人にしか知られていない。
娯楽が悪みたいな空気でも、わたしは映画館で映画を観る事が好きだ
現在はサブスクリプションで同時公開されている映画も増え、以前に比べて、映画に触れる機会は多くなったと思う。ただ、劇場公開のタイミングに日程を合わせて、「映画館に足を運んで映画を見る」という行動体験の機会を多くの人が求めなくなったような気がする。
元々、そこまでして映画館で映画を観ることに興味がなかったのかもしれないけど。
そして、ここ2年半くらいは「娯楽が悪」みたいな空気を感じてしまい、映画館に行くことを抑圧されてしまっているなあと感じる。わたしは心底つらい(といいつつ、今月もちゃっかり「子供はわかってあげない」を鑑賞しに行っているが。あはは)。
それでも、わたしは映画館で映画を観ることが好きだ。
長い時間電車に揺られて、急いで入場して、そしてあの無機質なクーラーのにおいが充満する館内で、そこにいるすべての人が心置きなく映画を鑑賞できる日を待ち望んでいる。