ロリータ系とかゴシック系、地雷系と呼ばれる類いの洋服が好きだ。
パニエを履いて……とまではいかないが、フリルやレースがたっぷりだったり、胸元に大きなリボンを結んだりする洋服を良く着る。
学校の友人とカラオケに行ったときに、お気に入りのゴシック系ワンピースを着てミニハットを着けていったら大層笑われて、ずっと当時のことをからかわれたのを良く覚えている。
だから私は、好きな洋服を着て出掛けなくなった。

笑われたのはゴシップ系ワンピではなく、それを着た私だったのかも

でも最近、ふと気がついた。
ゴシック系ワンピが笑われたのではなくて、それを着ている私が笑われたのではないか。
私の容姿は、重めの黒髪ストレートに瓜実顔、太くて濃い眉毛、広い丸額……。いわゆる「純日本人顔」だ。某漫画の言葉を借りるなら、「平たい顔族」の20代女性代表。
浮世絵に描かれているような顔である。
手足が特別長いわけではなく、身長も160センチ弱。扁平脚なので高いヒールも履けない。
当時の私は中学3年生だったから、メイクはおろか、髪を巻くだとか、ましてや「眉毛を整える」ことさえ知らなかった。そういった興味が薄かったのもある。
そして学校では「生真面目委員長キャラ」だった。
別に意図してそうなったわけではないが、成績が良かったことと規則は守るものだと常々言っていたのが、キャラ誕生のきっかけだろう。
つまり、洋服と自分が合っていなかったのだ。
かわいい洋服と、かわいくない自分。
きれいな洋服と、ぶさいくな自分。
西洋風の洋服と、純日本風の自分。
きっと私の好きな洋服を着た私は、服と顔とハットがばらばらの、全身福笑いになっていたことだろう。
それか、顔だけ浮いていたに違いない。

現実の「等身大」を知った私が買ったのは、カジュアルなTシャツ

大学生になり、実家を出て東京で一人暮らしをし、アルバイトができるようになって、自分で好きな洋服を買えるぞ、となったとき、私は一番にロリータを買うんだろうなと、中学生の時は思っていた。
でも実際に買ったのは、女子大生に人気のプチプラカジュアルブランドの、1300円のTシャツだった。
着回しがしやすくて、浮かない。
買った理由はありきたりだった。
大学進学までの4年間で、私は現実の「等身大」を知ったのだ。
学校では男子から「死神」だの「ヴォルデモート」などと、容姿を馬鹿にした言葉を受け続けていたのもある。ショックはないというか聞き流していたけれど、心の奥底にはしっかりぐっさり刺さっていたようだった。
かわいい洋服を着たいと思っていた、中学時代の「夢みる等身大」にはもう戻れない。

東京で出会った、「夢みた等身大」そのものになった人たち

でも、東京にはいろんな人がいた。
パニエを履いて、金髪縦ロールにピンクのロリータを着たお姉さんが地下鉄に乗っていたり。ロリータまでいかないけれど、フリルやレースを多めに使った淡いピンクのブラウスにジーンズを履いたお姉さんが、恋人と手をつないでいたり。
彼女らはみんな、「等身大」に見えた。
「夢みた等身大」そのものになった人たちだった。

多分私は、周りから笑われないか、浮かないか。周りの目だけを気にしすぎていた。
ありきたりな話だけれど、本当にそうだったのだ。
今私は、「夢みた等身大」を目指している。
明日は、舞台女優を目指している友人からメイクを教えてもらう。
舞台上で様々な女性に変身する彼女なら、私を夢みた等身大に、きっと近づく手助けをしてくれるだろう。