みんなのクローゼットの右端には何があるだろうか?
私の部屋のクローゼットの1番右には、いかにも重そうな服がある。裾が長い為、大きなビニール袋に入れて吊るしてある。丈夫な二つのハンガーがしっかり支えている。
その服は、くすんだ白いウェディングドレス。私の思い出の一着だ。

どこか汚れのない純粋無垢な存在であり、幸せの象徴のように見えた

自分でお金を出して買ったウェディングドレスを、試着以外で着たことはない。
別に結婚する予定もない。ただ欲しくて買った。着たくて買ったのだ。普通の服と同じように。ウェディングドレスであるというだけで。
その一着は昨年の11月下旬に買った。貸衣装の処分市で。Twitterか何かで、フォローしてる方のリツイートで催しを知った。
販売員の方曰く、買っていった人は、被写体活動をされている方や、ピアノの発表会でステージに立たれる方などらしい。私が買ってもおかしくないだろうと思った。
私は被写体活動をしている。シンガーソングライターでもある。ステージに立ち歌を歌う。

何故ウェディングドレスが欲しくなったのか。
その年の11月、私はカメラマンの友達と百合撮影をした。その友達もその日は私と同じように被写体。友達は真っ白なウェディングドレスを着た花嫁。私は真っ黒なワンピースにロザリオをしたシスター。その様な設定。

それぞれ自前の衣装。ウェディングドレスは自分で購入したそうだ。ネットなどで売っていると教えてもらう。
撮影日、ウェディングドレスを着た友達はいつもより大人っぽく見え、綺麗だった。
私も欲しいな、そう思った。ウェディングドレスがどこか汚れのない純粋無垢な存在であり、幸せの象徴のように見えてしまった。
それを着ているからって幸せとは限らないのにもかかわらず。

念願の1着。家まで重かったけれど、気持ちはとても軽やかだった

ウェディングドレスを購入した日、私は、アルバイトが終わったら貸衣装の処分市に行こう、とアルバイトをする前から決めていた。
アルバイトが終わる時間は17時、処分市には十分間に合う時間であった。
しかも、アルバイトの帰り道に必ず通る駅だったので、すぐ寄ることができた。

そのデパートへ行くと、白いドレスだけでなく、カラードレスもあった。
しかし、私は白いドレスが欲しかった。
自分が着ることができる号数かつ気に入ったものを手に取り、試着室へ。
私が行った時間は空いていたので、悩みながら選ぶことができた。 
販売員の方とお話しながら着せてもらう。後ろが編み上げタイプのものは自分では着ることができないので、やってもらった。

結局2着で悩み、最後はドレスのスカート部分に大きなリボンがついたドレスにした。
念願のウェディングドレス。家に持って帰るまで非常に重かったが、気持ちはとても軽やかだった。いつ何処で着るかも分からないのに。
幸せを手にしたつもりだったのだろうか?

着ないドレス。いつか好きなカメラマンさんに写真を撮って欲しい

そうしてそのウェディングドレスは我が家にやってきた。
そこからもう少しで1年が経とうとしている。
着ないドレスを買うことは、お金の無駄遣いだと言われればそれまで。しかし、あると何処かホッとする。それはまるで形だけでも幸せになった気持ちに。

せっかくあるのだから、いつか好きなカメラマンさんにそのウェディングドレスを着た写真を撮って欲しい。
願わくば、大好きなパートナーとのツーショットも。
別にウェディングドレスにあった服装でなくても良い。きっとその人が私にお姫様になる魔法をかけるのだから。
まるでシンデレラが魔法使いに魔法をかけられてドレスを着るように。今現在パートナーはいないので、それは夢の話だが。夢で終わるかもしれないが。
幸せって何なのだろうか?