思い出の一着、私はすぐにある一着浮かんだ。数年前の春、専門学校に入学したてのわくわく感でいっぱいだった。電車で片道1時間、毎日登下校は大変だったけど、新しい環境がとても楽しかった。

1週間位経ったある日、同じクラスの男子と電車が一緒になった。あんまり話した事なかったけど、隣の席で一緒に帰ることになった。彼は話すのが上手で、楽しくて電車の時間が本当にあっという間だった。

話の流れで、近々学校行事でボーリング大会があるから一緒に練習しにいこう! という展開になり、遊びに行く事が決定した。それから学校でも少しずつ話すようになって、今日も電車も一緒かなー? とか段々思うようになっていった。

一緒にいて楽しい彼と友達で終わりたくなくて、付き合うことになった

約束してたボーリング練習の日、彼が駅まで車で迎えに来てくれて、ボーリングに行った。彼は下手だから練習付き合ってと言っていたのに、私より全然上手だった。学校行事前に練習したのは2人の秘密だね、なんて笑い合いながら過ごす時間が心から楽しかった。

その後はたしか海に行った。いっぱい話して、写真を撮った。それからも何回か遊びに行って、曖昧な関係が嫌で、「関係をはっきりさせよう!」と言い出したのは私だ。
ぶっちゃけめちゃめちゃ好きなのかどうかは分からなかったけど、一緒にいて本当に楽しかった。友達で終わりたくなかった。

すると、「付き合おう」と言われ、4月の終わりに付き合うことになった。それからは一緒に帰ったり、友達も交えて遊んだり、充実した学生生活が始まったー! と思ってた。

彼は同じクラスの女の子と仲良くしていて、私は見てないふりを続けた

しばらくすると、彼がクラスの女の子と仲良くしてるのがなんとなく分かった。私は彼とまだした事なかったけど、その子とは何回かしてると友達から聞いた。よく分からなかった。
彼にとって私は何なんだろう? でも、私は何も知らないふりをした。それでも一緒にいたかったから。

私は大好きなヴィヴィアン・ウエストウッドのワンピースを買った。彼も好きなブランドだった。次2人でどこか行く時に着ていこう、なんて思ってた。

彼に振られて、次のデートで着ようと思っていたワンピを見ると涙が出た

そんなある夜、彼から電話が来た。別れ話だった。彼が仲良くしている女の子の事は一言も話してこなかった。せめて本当のことを聞きたかったのに、ただただ「別れたい」と言われた。
電話で終わりたくなくて、せめて直接話そうと言ったら学校前の朝ならと言われた。駅近のカフェでもう一回しっかり振られた。

ごめん、自分には幸せに出来ない。友達に戻りたい。今でもその空気感を体が覚えてる。

おうちに帰ると、ハンガーにかかってるヴィヴィアン・ウエストウッドのワンピースが目に入った。涙が出た。デートで着ようと思ってたのになあ、そもそも1ヶ月位しか付き合ってないのに振られて涙が出るのも悔しいなあ、とワンピースを見ながら色々思った。

これが私にとって、苦い思い出の一着。何回か着たけどなんか苦しくなって、最終的にはリサイクルショップに持って行った。どこかの誰かにとって、このワンピースが素敵な思い出の一着になっていたら嬉しい。