私が推しと出会ってから、一年が過ぎた。彼との出会いは大学の軽音サークルだった。
私は高校生の時から軽音サークルに入りたいと考えていた。なぜなら、自分の好きな曲を自分で演奏してみたいと思っていたからである。
初めての練習の日。少し緊張して部室に入ると、「イケメン」が
辛かった受験が終わり、晴れて大学生になったものの、コロナ禍でサークルはおろか対面授業さえも禁止された。自宅で一人で過ごすことが多かった私は、好きな曲を何度も聴き、軽音サークルへの憧れを膨らませていた。
幸い私の住む地域ではコロナウイルス感染者が比較的少なく、三か月ほどすると対面授業やサークルの活動が再開された。私は迷うことなく軽音サークルに入部届を提出した。演奏する楽器は、ただかっこいいからという理由でギターを選んだ。
私の入部したサークルでは、新一年生のための「ニューフェイス」というライブが存在する。新一年生に楽器の演奏の仕方や機材の使い方などを教えるため、先輩方が事前にメンバーを決め、そのメンバーで新一年生の弾きたい曲を一緒に練習し、演奏するという流れだ。
日程の連絡などはSNSを使ってやりとりするため、初めての練習まではメンバーがどのような人か分からない。迎えた初めての練習の日、少し緊張しながら部室に入ると、そこには痩身長躯の男性がいた。マスクをしていても分かる整った顔立ちを見て、このような人が俗に言う「イケメン」なのだと感じた。
ぱっちり二重の大きな目、長く上向きのまつ毛、高い鼻……私は彼に一目惚れしてしまったのだ。
練習を重ねるうちに、彼の気さくで優しい人柄にも惹かれていった
さらに彼は、なんと私と同じバンドでギターを担当する先輩だった。ギターを触ったこともなかった私は、彼に手取り足取り教わりながら練習をした。練習を重ねるうちに、彼の気さくで優しい人柄にも惹かれていき、いつしか彼は私の推しになった。
そして無事ニューフェイス本番の日を迎えることができ、緊張しながらも大きなミスをすることなく演奏を終えることができた。
一回のライブが終わると、メンバーを組み替えてまた別の曲を練習することになるため、私と推しとの関わりは少なくなっていった。しかし、大学ですれ違う度に微笑みながら挨拶を返してくれたり、部室に置いてあるビデオゲームで一緒に遊んでくれたりする推しに、私はどんどん好意を抱いていった。
それからも何回かのライブを経験し、私は少し難しい曲も弾けるようになっていた。推しが過去に弾いた曲を演奏することになったライブもあった。
その曲は初心者が弾けるようなものではなく、ギターを三年間弾いている推しでさえ「難しかった」と言っていたほどだ。練習の度に諦めたくなるほどの難易度で、心が折れそうだった。しかし、推しが「頑張って!」と励ましてくれたことを思い出しながら何度も何度も練習し、次第に上達していった。
推しへの感謝の気持ち。幸せを願いながら日々過ごしていきたい
本番では過度に緊張してしまい上手く演奏できなかったが、周りの人からは「頑張ったね、すごかったよ」と褒めてもらうことができた。推しがいなかったらこんなに上達していなかっただろうし、大変な練習に耐えられず投げ出してしまっていたかもしれない。
私は推しに感謝の気持ちをを伝えたいと思い、自己満足かもしれないが誕生日プレゼントを渡すことにした。
あのニューフェイスライブの本番からちょうど一年が経った日、プレゼントを渡した。その日が推しの誕生日だったのである。推しは私が選んだプレゼントを喜んでくれ、私も幸せな気持ちになった。
私はこれからも推しにお世話になることが多々あるだろう。推しのおかげで頑張れることや乗り越えられることもあるだろう。その度に感謝の気持ちを忘れずにいたい。そして、推しの幸せを願いながら日々過ごしていきたい。
今日も私は、推しのことを考えながら生きるのである。