もう2年ほど前のことになる。その別れは突然やってきた。
一本のLINE通知。きっといつものやつだと思ってしばらく放っていた。
しばらくしてから、「あー、そういやなんか来てたな」と思って開いてみる。
ぱっと見てなんとなく悟った。これはいつものじゃない。そこには何やら文章の書かれた1枚の画像があるだけ。
活動終了のお知らせだった。
まるで私のことを歌っているんじゃないか。当時はそんな曲に救われた
こうして、私の大好きだった某邦ロックバンドへの恋は、なんとも一方的な形で断ち切られてしまった。
というのはこちらの勝手な解釈で、そもそもこっちからの一方的な想いなんだから、向こうからしたら断ち切るもくそもない。ただ、最後のライブも何もないまま突然いなくなってしまうもんだから、悲しみも涙もなく、ただ心にぽっかりと穴の開いたような、そんな心地だった。
「こんなことならライブに行っておくんだった……」という美しすぎる後悔だけが、今も居座っている。
唐突に活動を終了したそのバンドは、私にとって特別だった。
出会いは確か、高校1年生の秋。あるアニメのオープニングテーマになっていたそのバンドの曲に、私は完全に惹きこまれていた。それまでもアニソンなどさんざん聴いていたし、好きな曲だっていくつもあった。でも、何かが違った。
励ましとかメッセージというより、ただ自分の内にあるありのままを吐き出しているような歌。そして絶妙なバンドサウンド。その曲は、おこがましいことは承知の上で、まるで私のことを歌っているんじゃないかと思うぐらい、その時の私とシンクロしていた。
自分の中に渦巻いている悶々とした想いに蓋をすることはない。そういう感情があっていいのだ。そんな風に思えて、とても救われた。
このバンドがなければ出会えなかった人や世界は数えきれないぐらいに…
そこからは、一気にこのバンドに沼落ちしていった。それまで、三次元の人間をそこまで好きになったことがなかった私の初恋を捧げたと言ってもいい。
新譜もインディーズも、シングルもアルバムも、とにかくCDを買い集め、それでは飽き足らずライブDVDやPV集にも手をのばす。それまで立ち寄ることもなかった雑誌コーナーに足しげく通ってはインタビュー記事を読みあさり、観たこともなかった音楽専門チャンネルを観はじめた。
受験から解放されると、ライブやフェスにも行った。初ライブも初フェスも、彼らが地元関西に来るまで待てず、名古屋や山口まで日帰り弾丸ツアーを決行。そして何より、自分でもやってみたくなって、大学に入ると迷わず軽音部に入部してギターを始める始末だ。
かつてロックはうるさいから嫌だと思っていた私は、もうどこにもなかった。このバンドがなければ出会わなかった人や世界は数え切れない。
しかし、私にこんな大きな影響を与えたバンドが、気付けばその活動に幕を下ろしている。
正直、活動終了が発表されるまでの数年、彼らの楽曲は聴いたり聴かなかったりだった。ライブにもずいぶん行ってなかったし、他のバンドに浮気することもちらほら。一周回ってお留守になっていたようなところはあった。
それでも、定期的に聴きたくなって帰ってみるとやっぱりこれだと思うし、辛い時に助けてくれたのは、結局いつだってこの人たちだった。受験も、留学も、大変なことがあった時も。
励ますとか慰めるとかいうよりも、ただ側で寄り添うように音を奏でる。そんな彼らの音楽に、私は何度も救われてきた。
ふと感じる「寂しさ」。だからこそきっと、この恋は終わらない
だから、活動終了はやはり寂しい。2年が経とうとする今でも、無性に恋しくなることがある。あの曲この曲を聴いては、ライブでぴょんぴょん飛び跳ねた時のこと、ギターで弾けるよう必死に練習した時のことに思いをはせる。そして、ふと「そうか、彼らがライブをすることはもうないんだ…」と感傷に浸る。
今ごろ、みんなどうしているのだろう。メンバーそれぞれどんな道を歩んでいくのか、また一緒に何かすることがあるのかないのか、もはや私の知り得たことではない。
ただ、彼らが私にとって特別な存在であるということは、今までもこれからも変わらない。彼らが世に生み出した音楽を、今でも私は聴いているし、歌っている。そして心動かされている。これからだって、そうだ。
いつまでも、あなた達の音楽が大好きだから。
そんな想いで今日も聴く。きっと、この恋は終わらない。