社会人3年目。
人生の4分の1以上もの期間を、「なんかパッとしない感じ」と総称したくはないけれど、記憶のどこをなぞっても飛び抜けた実績は一向にない。
だけど、ちょっとした人生の転機みたいなのが、こんな凡人にもありはする。
大学入学当時は「すっぴん至上主義」。私はずっと少年のままだった
大学に入学した頃。周りがメイクやファッションをレベルアップさせて一気に大人になっていく中、私はずっと、少年のままだった。
いや、たしかに私は「女の子」なのだけれど。友人たちから見える私はいつも「少年みたい!」だった。
化粧はしないし、髪は毛量多めで真っ黒。お気に入りの服を着ても、街ですれ違う鏡越しの自分は、想像してたスタイルと全然違くて、こちらから目をそらしがちだった。
じゃあもっと、ファッションを研究すれば?今や、タダで何でも教えてくれる媒体がいっぱいあるじゃない。
そう、そうなんだけどね。当時私が掲げていたのは「すっぴん至上主義」。どこでもボサボサヘアー&しわくちゃの洋服で歩けてしまう、ヘンな強さを持ち合わせていたの。
……とおどけてみたけれど、本音を言うと、化粧するのも髪を染めるのも服を買うのもなんだか抵抗があった。「私なんかがファッションだなんて」、それが心の中の口癖だった。好きなものに染まりたい自分と、自己否定の沼にはまった自分とで、地味な闘いを起こしていた。
就職して化粧が必須になると、自分に似合う色味や質感があることに気づき始める。
髪色重たいのやだなぁ。美容師さんにされるがまま明るめの茶髪にしてみたら、少し垢抜けた。社会人2年半にしてやっと、ファッションを気遣う自分を許せるようになってきた。
テレビを通して出会った彼。彼のマインドにやられてしまった
恋をするとなんとやら。
半年前、こんなベストなタイミングで、彼と出会った、テレビの画面を通して。
彼は歌を歌い、誰かを演じ、ラジオで語り、モデルで魅せる。
私の好きな音楽を繰り出す、あるアイドルグループの一員である。
彼の容姿が気に入ったわけじゃない。彼の歌声や演技に惹かれたわけでもなかった。響きが良くて「恋」なんて言ったけれど、ただ、いくつかの媒体を通してみえた「人がどう思おうが、失敗しようが、俺は俺の好きなファッションをする」という姿勢、彼のそういうマインドに、私、ちょっとやられてしまったんだと思う。
彼は指輪をたくさんする人だった。
私は今まで「指輪なんて、邪魔だしつけたくない」と公言していたけれど、そんなの本当は嘘だった。小さい頃にお母さんからもらった指輪をずっと、アクセサリーボックスの一番下に入れて捨てずに持っていた、いつかはつけてみたい、と。
でも、「私が指輪を?」。短い中太の指に、似合うわけないじゃない。そうやって、本音はどっかに追いやっていた。
「私も好きな指輪をしていいんだ」
煩わしくも思えるほどジャラジャラと指輪をつける彼の指を見て、思った。
「私に似合う指輪を買いに行こう」
ちょっと前まで、指輪アンチだったくせに。打って変わって、全身でワクワクしていた。
悩んで悩んで選び抜いたその子は、目が合うたび私の平凡な人生にちょっとスパイスをくれる、素敵な指輪だった。
自分をいつも好きでありたい。明日も明後日も私の好きな私で生きてく
彼が美容の話をするのを聞いて、化粧水やら美容クリームを使い始めたし、体のために食事管理していると聞いて、ダイエットも始めた。ただ彼と同じことをしたいとか、彼に依存してるとかじゃない。彼がそうであるように、私も、こうなりたい、こうありたい、こうしたい、そういう思いを大切にしたいと思った。そして、自分をいつも、好きでありたい。
憧れの彼は、私のことを知らずに生きているけれど。
こうして言葉にしてみたら、風だか、電波だかに乗って、どこかで彼の力になるかな、なんて思う。
ありがと、彼は私のこんなにも平凡な人生を「『私なんか』でまとめないでよ」そう、悟してくれた人だ。
彼が、彼を自由に生きてるように。
明日も明後日も、私は私の好きな私で生きてく。