ふとした瞬間、風と共に匂いが私を過去に引き戻し、前向きにしてくれる。ちょっとひんやりとした、清々しい自然の混ざった風の匂い。
私はサービス業で働いている。自分の接客・パフォーマンスで、お客様の想像を超える感動、おもてなしを提供する。そのたびに、私は準備をする。
どんなに準備をしても結果はやってみないとわからないものなので、不安や焦りはつきものだ。そんな時、風は匂いを連れて吹く。

大人になって思い出す、小学生の時に感じた風の匂い

小学生の時に感じた風と同じ匂いだ。まだ頭がぼーっとしている私に、清々しい朝のひんやりとした風が吹く。毎朝同じ通学路を重いランドセルを背負って歩く。そして、たくさん学んで、思いっきり遊んで帰宅する。
毎日の繰り返しの中でも、日々の勉強の成果がでるテストや、人の前に立ち発表がある日の朝、もしくは牛乳嫌いで好き嫌いが激しかった私にとって、お昼の給食タイムに嫌いな食べ物が出る日の朝は決まって朝の通学路の道のりが長く感じ、足が鉛のように重く動かない。
足がどんなに鉛のように重くても、一緒に通学する登校班はどんどん進んでいく。置いていかれないように私も重い足を動かし、流れに沿って歩いていると学校に到着する。
到着してしまえばいつもと何ら変わらず、学ぶときは学び、遊ぶときは思いっきり遊ぶ。
勉強不足と焦っていたテストも、恥をかくかもと不安だった発表も、嫌いな食べ物が出てくるかもと思っていた給食タイムも一瞬で終わっていて、いつの間にか下校の時間になっていて帰り道を歩いている。
結局、帰り道に吹いている自然の匂いを運ぶ風にあたりながら、朝の憂鬱な気持ちはどこへ、何を不安に思い気分が下がっていたのだろうと、今日一日楽しかったと思いながら家に着く。

きっといいことがある。過去の思い出が不思議な自信をくれる

現在、わたしが仕事に追われ不安や焦りに押しつぶされそうなとき、ふとした瞬間、同じ匂いがする風が吹くと小学生ながら感じていた憂鬱な気持ちを思い出させる。なんだかんだ時間が流れ、何事も楽しかった、よかったと思わせてくれる。
だから今わたしのやっていることは不十分ではなく、何とかなると過去の思い出が不思議と自信となり、いいことがあると前向きなイメージを膨らませてくれる。
また、どこか憂鬱ながらも学校に行って、新しい発見、いつもとは違う出来事に心躍らせている自分も少なからず同時に存在していたことを感じさせる。実際、仕事が終わった後には、新しい発見があったり、一回り成長していたり、楽しかったと思えたりしているのだ。

今日ふとした時に感じた風の匂いが、未来のわたしの自信になる

風が運んでくる匂いは、時に場所や考えていることに影響され、思い出させる記憶も違ってくる。
たとえば、友達と語りあったときに吹いた風の匂い。なにが正解なのか、生き方に対する価値観・考え方を話し反感・共感しあった、あの時の風。
たとえば、家族と公園で遊んで帰る間際に吹いた強い風の匂い。なにが楽しくて笑っていたのかも思い出せないけど幸せを感じていた時のあの風。
たとえば、部活や学校イベントを仲間と一緒に一生懸命に取り組んでいた時に吹いた風の匂い。達成感に浸った時に吹いたあの時の風。
少しずつ匂いも変化している。風と共に匂いが記憶を思い出させ、懐かしさで心満たされ、過去に自分がしてきたことが自信につながり、前向きな気持ちになる。

そして今日ふとした時に感じた風の新しい匂いが、未来のわたしの自信の一つになりますように。