9月の半ば、1件のLINEが届いた。「久しぶり! Franちゃん、前期に体調崩してゼミ休んでたけど大丈夫? 夏休みはどう過ごしてたのー?」。

通知を見た瞬間、ドクンと私の心臓は大袈裟に鳴った。送り主は大学の同じコースに所属する友達。ゼミや授業の業務連絡以外では、あまり連絡を取り合わない子からいきなり送られてきたメッセージに、私は戸惑っていた。

大学で「自分のポジション」を見つけることができないまま過ごしてきた 

というのも、私は大学に入ってから驚くほど友達作りに失敗し、ほぼ仲の良い友達といえる子がいなかったから。「大学に入ったら友達と遊びに行ったり、お泊まりしたり、一緒に海外に行って楽しく過ごせる」なんて夢見ていた自分の頭の中が、いかにハッピーセットだったことか……。大学で自分のポジションというものを見つけることができないまま、この4年間を過ごしてきた。

授業が被ったり、ゼミで一緒になったりした子とはもちろん話をするし、コースに所属しているみんなとも仲は良い方だ。だが、それ以上にもそれ以下にもならず、学校の外では交流はなかった。

あんなにも憧れた大学の友達とのお泊まりやお出かけを一度もすることもないまま、私は今みんなの前から消えようとしている。

体調不良が続いたけど、相談できる友達はいない。私は「普通」を装った

前期の途中から原因不明の体調不良が続き、授業を休みがちになってしまった。卒業研究に力を入れていかなければいけない時期に、ゼミすらもまともに参加することができない。

そのことを相談できる大学の友達はいないし、仲の良い高校時代の友人には、こんな情けない自分を見られたくなくて、必死で「普通」を装った。家族とはほぼ毎日のように電話していたにもかかわらず、「1人でやっていけない」「自立できていない」と思われたくなくて素直に打ち明けられずにいた。

変なところでプライドを捨てられない見栄っ張りな自分。そんな自分がもっと嫌いになった。

だけどある時、もう自分の体調を偽れなくなり家族に助けを求めた。ひとまず療養のために地元へ帰ったところ、病院で適応障害と診断された。鬱状態が続き、今のままでは学業に専念できないだろうという理由から、大学が夏休みに入ったタイミングで休学をすることを決意した。

あと半期しか残っていないのに……という思いがさらに自分を苦しめ、悩ませる。

大学の友達から送られてきたLINEに、返信できないままの私

そんなタイミングで、大学の友達から送られてきたあのLINE。私のことなんか誰も気にしていないと思っていた。このまま、私は同じコースのみんなの前からそっと消え、そのままみんなは卒業していくとばかり思っていたから、この連絡は不意打ちだった。

返信しようにも、どんな言葉を返せばいいのかわからない。適応障害になったことも、実家に帰って安静に過ごしていることを打ち明けるのも、今の私にとっては難しいことだった。こんな弱い自分、バレたくない。

「心配してくれてありがとう。実はね、休学することにしたよ」。そんな簡単な言葉すら送信できないまま、私は既読無視を続けている。せっかくの優しさを、彼女の気遣いを、無駄にしているようで心苦しい。

こんなはずじゃなかったのになぁ、なんてありきたりなことを思いつつ、休学に入る手続きを行っている現在。あと少し、あと少しだけ私に時間をちょうだい。彼女に返信する勇気を溜めるには、まだかかりそうだから。