初めての彼氏の部屋へ。この匂いは、一生の思い出になる

大学2年生の初夏、初めて彼氏ができた。私より4つ年上の大学院生。少し私よりも大人な彼に会うたびに惹かれ、付き合ったのだ。

もともと女子大で恋愛とは無縁の生活だったが、友達に誘われた合コンがきっかけで出会った。初めは興味がなかった私だが、彼からの猛烈なアプローチをうけ、デートに出ていった。
毎回のデートがとても楽しかった。彼は背が小さいけれども頭が良くて、いつも大人の余裕を感じていた。自分にはない大人さに惹かれていたのであろう。そして告白され、初めての彼氏となった。

そんな彼と付き合って1ヶ月、初めて彼の家に遊びに行った。ドアを開けたその瞬間に気づいた。私の部屋と同じ匂いだと。
彼も私も匂いに敏感で、好きな匂いが同じだということを知った。
「この匂いは彼との一生の思い出になる」
そう確信した。しかしその2ヶ月後、急に既読無視をされた。私はまだ幼い考えだったから何もできず、そのまま3日が過ぎた。そして4日目にいきなり電話が来たのだった。彼からの初めての電話だった。
それは、私たちの関係を終わらせるための電話だった。

突然の別れ。彼よりも素敵な人を捕まえると決意

別れたいと思った理由は最後まで教えてくれなかった。急すぎる別れに動揺を隠せず母に泣きついた。そんな時に母は「もっと大切にしてくれる人が必ずいる。だから泣いてないで次にいきなさい」。
その言葉を聞いた時、涙が出ていたことも忘れ、悔しい気持ちが生まれた。彼よりも素敵な人を捕まえる、そう決意した。そこからまた出会いを求める日々が始まった。

来る日も来る日も「はじめまして」から会話が始まり、私は飽き飽きしていた。
そんなある日、友人からの誘いを受け、同い年の背が高い男の人と出会った。彼は笑顔が素敵で、とても言葉遣いが綺麗だった。そしてスポーツマンだからこその礼儀正しさがあった。出会ってきた他の男性にはない魅力をたくさん感じた。

そんな彼に惹かれ、付き合うことになった。付き合いはじめてから5ヶ月が経ち、彼は私の家に来た。彼は一言目にこう言った。
「お部屋、いい匂いするね」

前の彼氏と同じ匂いだということをすっかり忘れていたが、その言葉を聞いた瞬間、当時の思い出が蘇った。何も知らない彼は、純粋な笑顔を私に向ける。後ろめたい気持ちもあったが、私も「いい匂いでしょ」と自慢した。

同じだけど違う匂い。切ないけど幸せな匂い

今ももちろん私の部屋は同じ匂いのディフューザーを使っている。でも違うのは、笑顔が素敵な彼の匂いが混ざった匂いだということ。同じだけど違う匂い。ちょっぴり切ないけどすごく幸せな匂い。

彼と付き合ってもうすぐ2年になる。今、前の彼氏のことを考えると、私自身も恋愛経験がなかったからこそ沢山の失敗をしていたな、と反省ができる。
でも一つも後悔の気持ちがない。なぜなら私は今とっても幸せだと自信を持って言えるからだ。

そんな私達だが、このコロナ禍の就職活動を経て、私は4月からは社会人となる。学生と社会人は違うなんてことは私もわかっている。でも今のこの幸せな匂いがずっと続くよう願って今を楽しもうと思う。