悪い思い出だった結婚式に再挑戦。せっかち&のんびりでの準備は喧嘩ばかりだったけど
助産師で性教育youtuberのシオリーヌさんは、今春に看護師のつくしさんとご結婚。 「ジェンダーイコーリティな関係を目指しています!」と話す二人ならではの向き合い方をそれぞれの視点で綴ります。
助産師で性教育youtuberのシオリーヌさんは、今春に看護師のつくしさんとご結婚。 「ジェンダーイコーリティな関係を目指しています!」と話す二人ならではの向き合い方をそれぞれの視点で綴ります。
皆さんこんにちは!助産師のシオリーヌです。
前回の配信から少し時間が空いてしまいまいたが、その間に我々は引っ越しをしたり妊活を始めたりと、いろいろなライフイベントを経験しておりました。
さて今回は、今年の春に行った結婚式のお話。日本全国のたくさんのカップルと同じように、新型コロナウィルスの影響を受けて延期や時間変更などの調整を余儀なくされた結婚式。ただでさえ喧嘩が起こりがちなイベントだというのに、不測の事態にも対応を余儀なくされるなかなかハードな期間でした。
例に漏れず、幾度とない喧嘩を乗り越えながらなんとか開催した結婚式について、皆さんと振り返ってみようと思います。
もう二度とやりたくないと思っていた結婚式。もう一度チャレンジすると決めたのは、つくしの「楽しい思い出で上書きしようよ」の言葉がきっかけだった。
前夫との離婚をした原因は、結婚式を終えた翌日に発覚した相手の不貞行為だ。
大切な家族や友人たちに見守られ、人生で一番と言っていいくらいに幸福と周囲への感謝を感じた日。その次の日に訪れた、人生で最も辛いあの日のことを私は今でも鮮明に覚えている。
結婚式に出席してくれた友人からは、ドレスを着た私の笑顔の写真とともに「楽しかったよ」と続々LINEが届く。その一つひとつに「ありがとう。私も会えて嬉しかったよ」と返信を送る私は、ベッドに一人横たわりながら死んだ魚の目をしていた。
究極の多幸感から奈落の底に叩きつけられる体験を、もしもう一度経験することになったら、今度こそ私の心は死んでしまう。心だけでなく、身も心も、かもしれない。
そう思っていた私にとって、結婚式をもう一度行うというのは重たすぎる決断だった。
それに前回の結婚式では必要な準備をほとんど一人で行っていたので、あれをもう一回やらないといけないのかと考えるとシンプルに気が重かった。
昔からあらゆる行事の幹事を担ってきて、自らダンドリスト(段取り上手な人)という架空の肩書きを名乗るくらいなのでやってやれないわけではない。ただ夫婦の行事であるにもかかわらず、自分が主催者で夫は参加者としか思えない構図はなんだか虚しく寂しいものだったのだ。
……というような話を伝えたのちにつくしがかけてくれたのが、冒頭で書いた言葉だ。
トラウマとも言える最悪の思い出になった結婚式を、楽しい思い出としてもう一度やり直す。そう考えてくれる夫の思いがとても嬉しかった。
さらにつくしは準備を一人でするのは嫌だという私の思いも理解してくれ、「リーダーはつくし。私はメンバーだと思ってほしい」という謎の申し出も快諾してくれた。
そこまで言ってくれるならば、ということで私は人生で二度目の結婚式にチャレンジすることを決めた。
さて、これで「約束通り協力して準備は順調に進み、楽しく結婚式を終えられました☆」とはいかないのが人生です。夫婦関係とはそんなに単純なものじゃない。
結婚式の準備期間。端的にいって、私たちは死ぬほど喧嘩をした。喧嘩をして、話し合いをして、仲直りをして。1日も経たずにまた喧嘩をした。
一番近くにいる人だからこそ、期待をしてしまうし、それを裏切られたと思えばイライラもしてしまう。でもこれからも一番近くにいたい人だから、時間的コストも精神的コストも絞り出すようにして払って、話し合いの場を作る。そういう経験を、何度も何度も繰り返した。
根本にあった課題は、私とつくしの「タスク管理に対する価値観」が180度異なることだ。
つくしの思いはB面でたくさん語られるだろうからここでは割愛するが、私はとにかくToDoリストの項目を1秒でも早く片付けたい人間だ。
これは学生時代からそうで、たとえば1週間後が締め切りの課題があったとして、今日と3日後と6日後にそれに取り組む時間があったとしたら、間違いなく今日終わらせることを選ぶ。ToDoリストにチェックのつかない項目が残っていることがとにかく苦手なのだ。
「今できるけどやらない」という選択をするよりも、「今やれることは全部終わっている」という状況を作り出す方が、余った時間を心置きなくゆったり過ごすことができる。だからこそ「今できることは今やりたい」と考えるし、「今できるのにやらない」というのが辛い。
この部分がつくしとは対照的すぎて、めちゃくちゃに揉めた。もうしっちゃかめっちゃか。
つくしは割と期限ギリギリになってお尻に火が着くタイプなので、必然的に夫婦のToDoリストには未チェックの項目がどんどん溜まっていく。でも私はそれに耐え切れず、待てないから自分にできることをそそくさと進めていく。
もちろん私がそれを望んでやっているわけだから文句を言う筋合いなどないのだけど、前述したように私には「私が主催者になりたくない」という思いがあったから「話が違う!」と苛立ちが蓄積していく。
ここまで読んで、私と似たせっかちさんは「わかるわぁ……」となっているだろうし、つくしと似たのんびりさんは「辛いわぁ……」となっていると思う。
一つ思うのは、これは価値観の違いの問題であって、どちらが悪いとか優れているとかそういう話じゃないということだ。結婚式というイベントをきっかけにお互いの特性をゴリゴリに見せつけあって、自分とどう違うのかを知り、お互いが心地よく過ごせるための方法を模索できる時間が持てたのは、とても意義のあることだったと思う。
凸凹な気質や特性があるからこそ、相手の不得意分野を補ってあげられる場面もある。夫婦を一つのチームと考えれば、チームとして対応できるシチュエーションの幅は広がっているのだろう。
現に私はつくしののんびり気質に救われることだってたくさんある。
私はせっかちがゆえに、やらねばならぬことがどんどん積み重なってくると「今はもう疲れているから休むしかない」という時でも全く休めなくなる。頭がずーっとぐるぐる働いて、ベッドに入っても眠れない。とにかくPCを開いて、できることに向き合い続けていないと自分を保てないように思う。
そんな時つくしはそーっと私のPCを奪いにきて、「はいお休みしてくださいねー。今日はもうやらなくていいよー。お休みするのも仕事だよー」とブレーキを踏んでくれる。
私みたいな馬車馬は、運転教習所の教官が補助ブレーキを踏むように、第三者から強制的にブレーキを踏んでもらえないと止まれない時がある。彼の気質のおかげで私の寿命は延びている気がする。
何度も何度も衝突をしながら、お互いの気質や特性との折り合いの付け方を学びながら、なんとか結婚式を終える頃にはだいぶ相手への理解が深まっていたように思う。
そんな意味でも、やっぱりもう一度結婚式にチャレンジしてよかった。あの時提案してくれたつくしに、心から感謝をする。
それに結婚式を終えても、不幸なことは起きなかった。あの地獄が再来しなかったこともまた、私がトラウマを克服する大きな後押しとなる体験になった。
全然違う二人だから、きっとこの先もたくさん喧嘩をすると思う。
それでも一つ一つの違いを認め合って、上手な付き合い方を見つけあって、これからも前に進んでいきたい。
“性の話をもっと気軽にオープンに"をテーマに、 性にまつわる様々な情報を発信する助産師の性教育YouTuberシオリーヌ。 身体の仕組み、感情や欲求との向き合い方、大切な人との付き合い方、自立について… 学校でも、社会に出ても誰からも教わることができない「性」にまつわるあらゆる問いに、 真剣に向き合い、具体的な知識を伝えるための一冊です。
かがみよかがみは「私は変わらない、社会を変える」をコンセプトにしたエッセイ投稿メディアです。
「私」が持つ違和感を持ち寄り、社会を変えるムーブメントをつくっていくことが目標です。
恋愛やキャリアなど個人的な経験と、Metooやジェンダーなどの社会的関心が混ざり合ったエッセイやコラム、インタビューを配信しています。