その日はリクルートスーツ姿で、大学のトイレで泣いていた。

私なりに就活しようと思っていた時にかかってきた電話で感じた焦燥感

当時私は大学4回生。就活を始めて3か月ほど経過していた。
周りの人間は続々と内定を手にしていた。休学して留学をしたため、1年遅れての就活。同級生は一足先に卒業をしてそれぞれの道を歩んでいた。

「マジで早めにSPIはやっておくべき!」「○○商事の最終面接で面接官に詰められたから気をつけろ」など先に就活を経験している同級生からある程度の情報が手に入る私は、就活が1年遅れることをあまり恐れていなかった。

すでに単位を取り終えていた私にとって、就活のための時間を作るのは容易だった。
自分の興味のある会社の説明会や、セミナーなどに参加するためにスケジュールを組むのは、なんだか社会人の世界に一歩だけ足を踏み入れたような気がして少し嬉しかったことを覚えている。

私は私なりに、のらりくらりと就活をしようと思っていた矢先、双子から連絡が。双子も同じく留学で就活を1年遅らせていた。誰もが知っている大企業に内定をもらったらしい。
電話口で泣きじゃくりながら、その企業について何か言っている双子に、私はほんの一瞬「落ちたのか」と期待してしまった。最低だ。
「内定が出た!」とやっと聞いた時、80%の祝福の気持ちと、20%の残念な気持ちが私の中に渦巻いた。
電話を切った後、自分の持った感情に愕然とした。ショックだった。同時に焦燥感が一気に押し寄せてきた。

双子の大企業就職がプレッシャーに。私も有名企業から内定をもらえたが…

「双子の片方が大企業に就職するからには、私もそれなりのところに内定をもらわねば……」
今考えればなんと早計な、と呆れる。
しかし当時の私はプレッシャーに押しつぶされそうだった。元々不安症でプレッシャーに弱い私は「やばいやばいやばい」と、大学のトイレで涙が止められずにいた。

ESを何十通も書きほぼ惨敗。「これいつまで続くの……?」と絶望を感じていたところ、地元では知らない人はいない企業から内定がきた。断るわけにはいかない。結局その会社に入社し現在に至る。

入社したことに後悔をしている、というと、学生時代の就活を頑張った自分を否定するように思える。しかし現在は自分のやりたこととは全く違う(というかそこだけは頼むから勘弁してほしいと思っていた)部署に配属となり、悶々と、鬱々とする日々である。
あんなに苦労したのに。あんなに泣いたのに。 

朝起きる。通勤電車に乗る。トイレ休憩しに行く。そんな日常のちょっとした隙間に「私の居場所はここじゃない」と思ってしまう。

辞めるなら早い方がいい。先輩の一言が私の気持ちを軽くしてくれた

私の面倒を見てくれている職場の先輩の一言が、私の気持ちを軽くした。
「辞めるなら早めがいいよ」
現在の会社の色に染まる前に辞めろ、ということだ。
彼女も一度は転職を考えたが、結局せず後悔しているのだという。人生なんとかなるんじゃないかな?というかどうにかなってほしいという願望も入っているがそんな気がした。

学生時代に就活をしていた時は、どこかの会社に入らなければだめだと思っていた。だけど会社に入ってみれば、周りにはいろんなバックグラウンドの人がいる。元々全く違う業界にいた人、定年退職した後に再雇用された人。
そんな人たちを目の当たりにしていたら、わたしも動き出さなくちゃと思う。
25歳、私は今日も転職サイトを眺める。