大学を卒業したら自殺しよう。
割と本気でそう思っていた。大学生活は私が過ごせる最後の、それこそ夢のような時間だった。

計画通り果たした私立大学への入学。大学生活は天国のようだった

公立大学には絶対に行きたくなかった(もう勉強はうんざりだった)が、高校は一応進学校だったので、第一希望から第八希望にはすべて公立を書かなければならなかった。そして前期後期の国公立の受験を終え、見事に落ちた私は計画通り私立の(真の志望)大学へと滑り止め入学を果たすことになる。

大学生活は天国のようだった。初めての一人暮らし。部屋で歌っていても咎められず、家族の目を気にすることなく趣味の同人活動にも打ち込めた。
滑り止めで入ったおかげで講義に遅れることもなく(ストーカーから逃げるために英語の講義のレベルを上げたりして)、楽しく着実に単位も取った。

だからこの大学生活が終わって、今後ずっと家と職場を往復するだけのクソつまらねえ人生が確定で待っているのなら死んでやる!と思っていた。
好きなことを仕事にしようとも思わなかった。好きなことを仕事にしたら嫌いになるタイプだ。かといって楽しくもない仕事を割り切って続けられるタイプでもない。絶対に仕事をしたくない。

耐えられなかった就活の圧。いたって「普通」に就職してしまった私

ところが現在、「普通に」就職してしまっている。
理由は簡単。卒業するまで、就活をしろという周囲の圧に耐えられなかった。
ちょうどその頃、主題歌に惹かれて劇場に観に行った映画『何者』が、ただでさえ就活を嫌悪していた私にしっかりとトラウマを刻んでいった。どうして観に行ったのか自分でも謎である。あんなに素敵だと思った曲まで恐ろしくなってしまった。

しぶしぶリクルートスーツを買いに行った。パンティストッキングを履くのが心底面倒だったのでパンツスーツを選んだ。
試着に付き合ってくれた店員さんは「スカートじゃなくていいんですか?」とおずおず尋ねてくる。パンツスーツを着てくる女が面接で落とされやすいことなど就活やる気ゼロの私は知らなかったのだが、そんなに女にスカートを履かせたいのなら服飾業界を買収してレディスのパンツスーツを売り場から消すくらいのことしなさいよ、と思う。

私はスカートとパンツが並んで売られていたからパンツを選んだだけだ。提示されている選択肢の中から選んだだけで、明確なルールを破ったわけでもない。パンツを履いているだけで落とす企業などこちらから願い下げです。

パンプスは入学式の際に買ったものをそのまま使った。これもヒールが2センチしかないので、3~5センチが良いとされる風潮からも外れている。でも「普通に考えて」、見栄えより自分の足の安全を優先したいのは何もおかしくはないと思う。

そんなパンプスでも履き慣れていないから当然、少し歩いただけで靴擦れを起こすので、御社の200メートル手前まではスニーカーで歩いて、履き替えて、ということをしていた。荷物は増えたが血塗れになるよりマシだ。

一刻も早く就活を辞めたい。だから、会社のことはどうでもよかった

私が選考に参加したのはたったの4社(うち3社、試験落ち)で、運良く現在の弊社に拾ってもらったのだが、本当に運が良かったとしか言いようがない。
私はとにかく面接に自信がなく(自信をつけるための面接練習ですらビビって行きたくなかったほど)、試験勉強もしたくなかった。死ぬより行きたくない業界だけを検索条件から外して、出来るだけ内定までのステップが少ない会社を探した。内定さえ出ればどこでもよかった。

ひとつだけ内定が出た会社があった。現弊社であるが、もうとんでもなくラッキーだった。
まず、一回面接に行っただけで内定が出た。説明会へ向かいながら腹を下し(時には逃げ出し)、帰途で泣くようなぼろぼろのメンタルだった私には、まさに天からの恵みだった。

面接官は別に面接のプロなんかではない(そもそも10分そこらで人となりがわかったら世の中こんなに詐欺は横行していない。説明会は会社が就活生を騙し、面接は就活生が面接官を騙せるかにかかっている。もちろん真面目にやっている人もいるだろうが)し、弊社の場合は当時新卒初年度ということもあってズブの素人と言っても過言ではなかった。

私はもうそこがどんな会社であろうとどうでもよかった。一刻も早く就活を辞めて、このズタズタになった心を癒したかった。就活という地獄の期間は私を確実に蝕んでいったし、ストレスで痩せていた頃に買ったリクルートスーツは細すぎて今は着られない。
面接官は私を落とした理由を教えてくれないし、ただ嫌いだったんだろうと思うと悲しい。私はうわべだけでも好きだったのに。

いつか然るべき理由で円満退社できるその日まで、私にできること

かくして文系学部から理系企業に就職したわけだが、まぁなんとかなっている。女だからナメられているんだろうけど、出世とかしたくないしちょうどいい。
あんなに働きたくなかったのになんでまだ働いているのかというと、退職手続きを調べてみたらとてもやっとられん!と思ったからだ。面倒臭すぎる。というか、どうせ仕事を辞めたって次の仕事を探せと言われるだけだし……就活をもう一度するなんて御免だし……。
今日も仕方なく働いた。明日も仕方なく働く。

いつか何らかの診断書が出て休職を経たのち、然るべき理由で円満退社できるその日まで。
私は書類を作ってるフリをしながらネットサーフィンをするような、ズルいサボり方しかできない。